【目標タイムは給油時間!】日本初のEV向けバッテリー全自動交換ステーション

公開 : 2024.11.19 07:05

電池なら100%充電済のものを装着可能

エムケイでは、ドライバー交代の前に充電して次のドライバーにクルマを渡すことになっている。20~30%にまで減っていたものが、30分の充電でだいたい80%まで入れられるという。それで特に不便はなさそうだし、19もの急速充電器があれば十分な気がするが、ドライバーさんによると「お昼休みと夕方はどうしても混みあう」とのこと。タクシーは稼働時間が大切なので、充電器の順番待ちのような時間はなるべく削りたいというのが本音だろう。充電ではなくこの蓄電池の交換であれば、半分の時間で済むということになる。

しかも、充電の場合はバッテリーの劣化を防ぐためにも80%までしか行わないが、蓄電池は100%満充電のものを装着できる。航続距離の面でも、それに伴う安心感を考えても、この20%の差は大きい。

現在、エムケイ本社横にある充電スペース。お昼休みと夕方は混みあうという。
現在、エムケイ本社横にある充電スペース。お昼休みと夕方は混みあうという。    平井大介

この実証実験は、クロネコヤマトも協力企業となっている。運送業の場合は稼働しない夜間に充電ができるのでは、と思ったが、利用者からは「蓄電池の交換の方が、安心感がある」という声が上がっているそうだ。夜間に充電する場合、何かしらの人為的ミス等で充電に失敗する事態が起こりうる。「朝、いざ動かそうと思ったら充電できていない! となるよりも、仕事終わりに15分間かけて蓄電池交換をし、目視確認できる方がありがたい」ということだ。

こうした現場の意見を得られるのが、実証実験を行う意義なのだろう。『利便性』は一元的に語ることができないものなのだと気づかされた。

Ampleのこの蓄電池交換システムは、乗用車から小型トラックまで対応可能。設置面積が小さく、地下工事は必要ない。最速3日間で展開できるというから、全国に広がり始めたらあっという間だろう。車両の蓄電池化と合わせて、EV利用のさまざまな可能性を探る糸口になりそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。
  • 撮影

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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