【再来年の愛車はこのカラーかも?】BASFがカラートレンド予測を発表
公開 : 2024.11.20 07:05
街を走っているクルマにはいろいろなボディカラーがありますが、その塗料を作っているBASFコーティングスは、2~3年先のボディカラーのトレンド分析を行い、毎年そのコンセプトワードとともに発表しています。今回も一部メディアにその内容が語られたので、発表会の様子を内田俊一がまとめました。
カラーをデザインする会社
ドイツの総合化学メーカーBASFの部門のひとつ、コーティングス事業本部は、日本や中国、アメリカやヨーロッパにデザイン拠点を置き、それぞれの地域を中心としたカラーを開発している。
毎年開催されているカラートレンド説明会は、主に自動車メーカーに対し行われているものだ。その内容は、グローバルで販売されるクルマであることを踏まえ、今後のトレンド(市場環境や情勢だけでなく、ファッションや文化、流行など)をそれぞれのBASFの拠点から情報を持ち寄って今後の状況を分析し、そこから導き出されるコンセプトワードを表現。それをもとに各デザイン拠点の市場の特色を踏まえながら、新たなカラー開発と提案を行っているのだ。
コンセプトワードは『ROUTING』
今回発表されたコンセプトワードは『ROUTING(最適な経路選択)』。通信技術分野でも使われているもので、これに込められた意味を、「デジタル化におけるコミュニケーションの複雑さと柔軟さを表している」と説明するのは、BASFジャパンコーティングス・カラーアンドデザイン・アジアパシフィックチーフカラーデザイナーの松原千春さんだ。
「デジタル化によってコミュニケーションは速くなったりショートカットで近道できたりと便利になる一方、ビッグデータなども出現し複雑化してもいる」とこのワードを説明。
そして、「人間と人間、人間とAIといったコミュニケーションの中で情報の扱い方ややり取り、情報の選択がトレンドに影響を及ぼす力が強くなっているようだ。今回のROUTINGはコミュニケーションという意味もある」とし、コミュニケーションとカラーは、「本質的には似ているところがある。どちらも常に変わり続けて、変化していく。そういうところもこのワードを選んだ理由だ」と語る。
このコンセプトワードからBASFでは様々なカラーを提案。松原さんは全体の傾向として、「黒からグレー系の少し暗い色、落ち着いたような色域、そしてここ数年のトレンドのパステル系の明るいカラーは継続して重要な色域」だという。そういった中で「少し紫がかった赤が特徴的」と話す。
トーンは落ちつつも個性を追求
こういったキーワードをもとに各デザイン拠点において、さらに独自のコンセプトワードを用い、その市場と時代を表す特徴あるカラーを開発。
日本を含むアジアパシフィックのキーワードは、『SCINTILLATION(シンチレーション)』。「星の瞬き、輝きというイメージ」とのことで、キーカラーは、「金属調の色をいかにサスティナブルで実用性があるように作れるかにチャレンジしたカラー」だという。「いまあるソリッドやソリッド調の先を行くメタリックカラーで、さらにアップグレードしたメタリックを楽しんでもらいたい」と説明し、「通常は蒸着アルミなどを使うところを、通常のアルミに近いものを使用することで汎用性がある。アルミの配合性、並べ方を工夫するとともにローVOCを目指すことで、世界で一番厳しいといわれる中国のVOC規制に合うような、サスティナブルさも持ち合わせたカラー」とのこと。
また、金属調のカラーは、「ちょっと冷たい感じでコントラストが強くなるが、あえて温かみのあるブラウンみのあるグレーで開発することで、テクノロジーと人間とのコミュニケーションを表現している」と説明。
このほか、欧州・中東・アフリカは『HARBINGER’S INK(ハービンジャーズインク)』というワードで、これは、「先駆者、先を行く人たちというような意味。インクはブラックが特徴で、先駆者の作るブラックカラーというイメージ」だ。ここではサスティナビリティが一番のテーマで、ブラックの顔料は、「海藻から抽出。その背景にあるのは天然資源だ」と新たなブラックが提案されている。
アメリカは、『HOLDING SWAY(ホールディングスウェイ)』。「これはコントロールする人と抑える人という意味合いで、スウェイは振り子のように揺れ、それをホールドすることでコントロールしていこうという思いだ」と松原さん。そこでカラーも、「赤からパープルまで色が変化していく。これは2つの違うものが融合したように見え、その揺れ、相反する力をうまくコントロールすることが重要だという表現だ」と説明した。
自動車のカラーの7割が白・黒・グレーで占められている。この定番においてもこれから変化が求められており、新たなカラー表現が始まりつつあることを今回のテーマから読み取れた。同時に、サスティナビリティを考慮した新技術開発が重要になっていることも見逃せない内容だった。