ACコブラ Mk2 347シリーズへ試乗 60年前とほぼ同じ! 「要求の高さ」がむしろ楽しい

公開 : 2024.12.02 19:05

ACエースのフロントに収まったスモールブロック

信号待ちで目を閉じると、気分はグッドウッド・リバイバルのスターティンググリッド。両サイド出しの太いマフラーから、排気音が直接響く。アイドリングでもやる気に満ちている。

クラッチは適度に重い。シフトレバーは、理想より少し奥。トルクは太いから、トップギアに入れたまま、1000rpmで50km/hの走行も問題ない。

ACコブラ Mk2 347シリーズ(英国仕様)
ACコブラ Mk2 347シリーズ(英国仕様)

筆者が目指すのは、グレートブリテン島南部のサリー州テムズ・ディットン。ACカーズは、ここに1911年から拠点を構えていた。1930年に、ウィリアムとチャールズというハーロック兄弟が買収。エースという名のスポーツカーは、1953年に発売された。

1961年、キャロル・シェルビー氏がエースの能力に感銘を受け、ハーロック兄弟へ連絡。その時、フォードで働いていたシェルビーは、シボレーコルベットで生まれた需要の一部を奪う任務を負っており、軽いV8エンジンを開発していた。

このスモールブロックは、少し手を加えれば、直列6気筒が載るエースのフロントへ搭載できた。既に登場から8年が過ぎていたエースは、V8エンジンを得てコブラとしてアップデートを果たした。

1962年2月から、ACコブラはテムズ・ディットンの工場をラインオフ。最初の注文ぶんとして、100台がカリフォルニア州サンタフェ・スプリングスにディーン・ムーン氏が構えるガレージへ届けられた。

通常以上の集中力が必要 見返りも大きい

そこでは、新しい260cu.inエンジンが次々に搭載される予定だった。ところが、126台が仕上がったところで、ラック&ピニオン式のステアリングラックと289cu.inエンジンへ更新された、コブラ Mk2へ進化。1965年までに、約530台が作られている。

更にパワフルなMk3も追って登場するが、細身のボディとタイヤで構成されるMk2は、本来のACカーズらしい雰囲気を漂わせる。控えめな美しさがあり、英国の道路環境にも適している。

ACコブラ Mk2 347シリーズ(英国仕様)
ACコブラ Mk2 347シリーズ(英国仕様)

次に目指したのは、グレートブリテン島の南岸、ウェスト・サセックス州のグッドウッド・モーターサーキット。路面が濡れているから、カーブが連続する区間で飛ばすには、通常以上の集中力が求められる。相応の勇気も。

そのかわり、見返りも大きい。カーブでは、リーフスプリングが支えるリジットアクスルを刺激しないよう、繊細なアクセル操作が必要。だが、ストレートではアメリカンV8特有の、ビートの効いたサウンドを堪能できる。

8本のシリンダーが一心不乱に働く燃焼音が、メカニカルノイズに重なる。4500rpmを超えると、アグレッシブさとドラマチックさが増していく。スピード感は、実際以上だ。

コブラ Mk2の0-100km/h加速は5.0秒と、本当に速い。それを本当に試すと、かなりスリリングな体験になる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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