122年前のクルマでラリー! 1902年式アルビオンA1へ試乗 複雑で面倒だから「面白い」

公開 : 2024.11.19 19:05

1896年からほぼ毎年開催されている、ベテランカー・ラン 1世紀前のクルマは基本的な運転環境が未完成 複雑で面倒でも、その手間が面白い 英編集部が1902年式アルビオンA1で参加 

伝統のクラシックカー・ラリー「ベテランカー・ラン」

クーペやサルーンが登場する以前、ボディスタイルの1つに、ドッグカートというものがあった。それはまだ馬車の時代だったが、愛犬を真ん中に乗せることから、そう呼ばれたらしい。

産業革命が訪れると、馬が引く必要のない自動車が登場。一部のメーカーは、馬車のデザインを大きく変えずに、ボディの片方へエンジンを搭載して販売した。この1902年式アルビオンA1のように。

アルビオンA1(1902年式/英国仕様)
アルビオンA1(1902年式/英国仕様)

英国では毎年、グレートブリテン島南部のロンドンから南岸のブライトンまで走る、ベテランカー・ランというクラシックカー・ラリーが開催されている。ひょんなことから、筆者とスティーブ・クロプリーは、そのA1で参加することになった。

参加車両は369台と、驚くほど多い。それでも、A1はかなりの古株といえる。クルマの管理者によれば、走れる状態にあるドッグカートは7台のみらしい。

今回助手席に座るクロプリーは、45km/hくらいで走れると期待していた。ところが、実際は全力疾走させても28km/hが良いところらしい。登り坂に差し掛かると、歩いた方が速い速度へ落ちるという。

小言をいっても仕方ない。ラリーは、走ることが目的。長い時間をイベントで過ごせると考えれば、むしろ楽しいといえなくもない。

基本的な運転環境が完成していない

実は英国では1896年まで、自動車の最高速度は時速4マイル(約6.4km/h)に制限されていた。赤い旗を持った先導人を付けることが、1865年からの条件になっていた。通称、赤旗法だ。

その後、法律の改正を経て最高速度は時速14マイル(約22.5km/h)へ上昇。当時のドライバーたちは、制限の見直しを祝うドライブを集団で楽しんだ。11月の第1日曜日に、ロンドンからブライトンまで。それが、このイベントの起源になっている。

2024年のベテランカー・ランの様子
2024年のベテランカー・ランの様子

1927年に、参加できるモデルを1905年式以前に限定するルールが導入。ほぼ毎年のように開かれており、英国では秋の風物詩の1つへ成長した。ロンドンやブライトン周辺では、大規模な交通規制が実施され、観客は数万人を数えるそうだ。

1世紀以上前のクルマの特徴といえるのが、ペダルが3枚、レバーが1・2本という、基本的な運転環境が完成していないこと。過去には、リアアクスルを後方へずらし、ドライブベルトに張力を与えて走り出す、という仕組みのクルマに遭遇したことがある。

それと比べれば、A1は馴染みやすい。エンジンは水冷式の水平対向2気筒。縦置きされ、チェーンでリアアクスルが駆動される。オイルの潤滑システムが特殊で、24km毎に冷却水を補充する必要があること以外、突飛な操作は必要ない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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