「ホンダの時代が来た」 CEOが語るEVの未来 世界で存在感を示せるか

公開 : 2024.11.19 18:05

鍵を握る他社との提携関係

ホンダの将来計画でもう1つ重要な側面は、他メーカーとの提携である。現在は破談となった米GMとの提携のほか、ソニーと折半出資のEV合弁会社アフィーラがある。

同社が生産するクルマは0シリーズと同じプラットフォームを使用すると言われているが、ホンダはクロスオーバーを否定している。

初代NSXでホンダの挑戦を恐れない姿勢が証明された。
初代NSXでホンダの挑戦を恐れない姿勢が証明された。

「インテリアのユーザー・インターフェースはソニーの技術を使って開発されており、位置づけは異なる」と井上氏は言う。また、「価格は高くなると思う」としながらも、まだ何も確定しておらず正式なものではないと付け加えた。

しかし、最も注目すべき提携は、国内のライバルである日産三菱との提携だ。詳細はまだ調整中だが、三部氏によればすでにソフトウェアの共同開発が始まっており、「その他のさまざまな分野」での協力についても話が進んでいるという。

ホンダは基本的に独自の道を歩んできたが、その歴史において数々の提携関係を築いてきた。最近の動きは、新技術の開発を加速させるという同社の本気度を示している。

もちろん、多くの自動車会社とは異なり、単一の分野で電動化に取り組んでいるわけではない。世界有数のバイクメーカーでもあり、パワープロダクツ、発電機、芝刈り機、ロボット、さらには高級ジェット機も手がける。

計画には、電動バイクや「ミニEV」(軽自動車に該当する四輪車を指すと思われる)で使用するためのモバイル・パワーパック(交換可能バッテリー)の開発も含まれる。

「2050年までに企業としてカーボンニュートラルを目指しているので、自動車だけでなく、バイクやパワープロダクツにもカーボンニュートラルの技術を導入していく」と三部氏は言う。

よくあることだが、中国は話が違う。ホンダは中国で2035年までにEVのみの販売を目指しており、2027年までに10車種のEV(そのほとんどが中国専用車)を発売する予定だ。

欧州で再び輝けるか

ホンダのブランド力は、本拠地である日本と米国では依然として強い。電動化を除いて、今後数年間の大きな課題は欧州市場での足場を回復させることだろう。

ここ数年、ホンダは為替レートの変動(英国とトルコにある欧州工場の閉鎖の要因)、米国と日本に重点を置いたラインナップ、欧州のディーゼル車離れなどの苦境に立たされてきた。

英国とトルコの生産拠点を閉鎖したが、依然として欧州には力を入れる。
英国とトルコの生産拠点を閉鎖したが、依然として欧州には力を入れる。

しかし、欧州での生産拠点がなくなったにもかかわらず、三部氏は「欧州では自動車文化が盛んであり、販売から撤退することはない」と主張している。

0シリーズはパワートレインだけでなく、欧州を視野に入れて開発されたという。

計画されている7車種すべてを各市場で展開するつもりはないため、欧州の嗜好に沿ったモデルも投入する余地が生まれるかもしれない。

「欧州で競争できるクルマをリリースしたい。市場の変化により欧州での生産は中止したが、今後もチャンスはあると信じている。将来的には、欧州で再び輝くことを目指す」と三部氏は語る。

ホンダはEVの世界で追い上げを図っており、これまでよりもはるかに厳しく多様な競争に直面している。

では、ホンダは再び存在感を発揮できるのだろうか? 確かに簡単ではないだろうが、決して不可能な夢ではない。

結局のところ、ホンダは自動車を作っていなかった状態からわずか2年でF1グランプリで優勝するまでになった会社であり、真に先駆的なゲームチェンジャーを開発してきた歴史がある。

おそらくホンダは、イノベーションを強いられたときに最高のパフォーマンスを発揮するのだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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