期待以上にモダンな体験:ACエース 戦前最高の技術を流用:ブリストル405 直6の英国車たち(2)

公開 : 2024.12.07 17:46

戦前最高といえたBMWの直6エンジン技術

他方、少量生産された1950年代のブリティッシュ・スポーツの多くには、ブリストル社製の直6エンジンが載っていた。その実力を確かめるなら、ご本家、ブリストル405が適任だろう。

AUTOCARでは何度も触れているが、第二次大戦で事業を拡大したブリストル・エアプレーン社は、戦後保証でBMWの技術を取得。戦前最高といえた直6エンジンの技術と、BMW 327の製造権利を手中に収めた。

ブリストル405 ドロップヘッド・クーペ(1954〜1956年/英国仕様)
ブリストル405 ドロップヘッド・クーペ(1954〜1956年/英国仕様)

アルミ製ロッカーカバーの形状から、ツインカムヘッドのように見えるが、カムはブロック側。プッシュロッドによってバルブは開閉され、クロスフローの半球形燃焼室を備える。ツインカムほど複雑ではなく、当時としては小型・軽量に収まっている。

405のスタイリングは、エンジンと異なり327と一線を画す。ジェット時代の到来を象徴するように、大きなフロントグリルは卵型。ボディは英国らしく、ウッドフレームにアルミ製パネルを張った構造を採用する。

同シリーズとして、404と呼ばれるショートシャシーのクーペが存在した。405ではサルーンの他に、今回の例のように4シーターのコンバーチブル、ドロップヘッド・クーペが用意された。

405 ドロップヘッド・クーペの車重は、1206kgと軽量。それでもサイズは小さくなく、全長は4807mmある。背中を起こした運転姿勢で、ロードスターというよりグランドツアラー的。ベントレーアルヴィスに雰囲気は近い。

至って滑らかで小さな宝石のよう

低域トルクが太く、動力性能に大きな不満はない。高速道路の合流も、臆せず済ませられる。80km/h前後の巡航なら至って快適。それ以上の速度域では、力不足に思えてくるが。

とはいえ、2.0Lエンジンは小さな宝石のよう。至って滑らかで、穏やかなコンバーチブルの雰囲気へ調和する。積極的な中間加速を引き出すには相応に回すことになるものの、音振が小さく上質で、それを実感しにくい。

ブリストル405 ドロップヘッド・クーペ(1954〜1956年/英国仕様)
ブリストル405 ドロップヘッド・クーペ(1954〜1956年/英国仕様)

カーブへ飛び込むと、柔らかいサスペンションと、高めの重心位置が減速を誘う。ボディロールは明確に大きく、クッションのようなシートは身体を支えてくれない。ステアリングホイールにしがみつきながら、旋回することになる。

405 ドロップヘッド・クーペは、ゆったりツーリングするのが正しいスタイル。派手なモデルではないが、製造品質は極めて高い。ペダルやシフトレバーなども含めて、車内の人間工学は理想的。ミッドセンチュリーの趣に浸り、移動を楽しめる。

完全な英国製とはいえないものの、BMW由来のブリストル・エンジンは、クラシカルなブリティッシュ・スポーツの特徴に合致する。当時スポーツカーの生産を考えた復数の小さなメーカーが、この直6を指名した理由にも大いに納得できる。

協力:SLJハケット社、ACヘリテージ社

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

直6の英国車たちの前後関係

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