MKタクシーを取材してみた(前編)【ヒョンデ・アイオニック5長期レポート3】

公開 : 2024.11.20 12:05

編集部はヒョンデ・アイオニック5を長期レポート車として導入。これまであまりEVと縁のなかった編集長の平井がレポートを担当しています。第3回はタクシー車両として導入している、MKタクシー取材の前編です。

MKタクシーがアイオニック5を採用した経緯

ヒョンデ・アイオニック5の長期レポートを担当してから、ちょっと気になることがあった。それは京都のMKタクシーが大量に採用していることだ。タクシーといえば過酷な走行条件にあり、そもそも充電はどうしているかなど、気になることばかり。そこで京都の本社を訪れ、エムケイホールディングスの東真一さんにいろいろと教えて頂いた。

ヒョンデとMKタクシーのコラボレーションが発表されたのは、2022年7月20日のこと。順次導入し、50台のアイオニック5を納車予定としていた。

京都の本社を訪れ、MKタクシーのヒョンデ・アイオニック5を取材。
京都の本社を訪れ、MKタクシーのヒョンデ・アイオニック5を取材。    平井大介

MKタクシーは2021年、コロナ明けや万博を見越してドライバー採用強化を実施。その流れでEV導入を掲げたところ、大きな反響があったという。京都は脱炭素化先行地域なので行政の反応もあり、ENEOSから実証実験が持ち掛けられたのもこのころだ(別記事で紹介)。

MKタクシーは既にEVの日産リーフを導入していた。タクシーの平均走行距離は昼150km、夜勤180~200kmで、例えば京都から関西国際空港までの往復約200kmといった遠距離まで含めると、安心できる航続距離ではなかったという。そこでリーフの台数を増やすのではなく、1充電の走行距離が満足いくクルマを導入したいとなった。

トヨタは購入ではなくサブスクだったので選択肢から除外。日産アリアを50台購入する話もあったが、コロナや戦争の影響で確保が難しい状況に。そこにヒョンデから「アイオニック5ならすぐ入ります」との話があり、試乗して、「これは行ける」となった次第だ。

840台中、182台のEVが登録済み

並行して進めたのが急速充電器の準備だ。あと半年で納車されるというタイミングから急ピッチで進めた。採用したのは韓国の『チェビ』という会社のもので、出力は180kW。2台同時に接続しても90kWずつだ。

タクシーは使用頻度が著しいため4~5年くらいで車両を入れ替える。MKには現在全部で800台くらいあって、年間130~140台、月に換算すると10台くらいは新車と入れ替えるそうだ。それを全部EVにしたら、単純に計算で5年あれば全車電動化が可能だが、現在タクシーの主力はミニバンとなっているため、すべてをEV化には至っていない。そのため、現在、セダンで使っていたものをEVに順次置き換えている。京都の観光地を訪れたことのある方なら、班ごとの修学旅行生がミニバンで動いているのを見たことがあるだろう。

本社横にある充電スペース。アイオニック5導入と同時に急速充電器も急ピッチで用意した。
本社横にある充電スペース。アイオニック5導入と同時に急速充電器も急ピッチで用意した。    平井大介

取材時点で840台中、182台のEVが登録済み。もちろんタクシーの場合、クルマを購入するだけでは使用できない。メーターや無線の取り付けが必要で、その新車装備には1台につきふたりの整備士が必要で、作業にとても時間がかかる。EVの場合さらに取り付けが難しく、特に電気配線に関わる部分は慎重に行う必要がある。そのため182台のEVのうち、107台が実際に稼働中で、75台は待機している状態とのことだ。(後編につづく)

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。
  • 執筆

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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