いまさら聞けない「水素自動車」って何? メリット/デメリット、課題とは 普及は実現可能か

公開 : 2024.11.21 06:05

トヨタ・ミライ

英国では比較的最近まで2台の水素自動車が新車として販売されており、一部の自動車メーカーもまた将来の製品計画に水素自動車を盛り込んでいる。

トヨタ・ミライは2015年に初登場し、2021年に第2世代に移行するまでに1万台の世界販売を達成した。最新のミライは、5.6kgの水素を貯蔵できる燃料スタックを装備し、WLTP航続距離は最長640kmである。

トヨタ・ミライ
トヨタ・ミライ

第1世代よりも重量が増し、サイズも大きくなったにもかかわらず、0-100km/h加速にかかる時間はわずか8.7秒、0-160km/h加速は25.5秒とされている。これは、最高出力182ps、最大トルク30.5kg-mを発生するパワートレインのおかげだ。

しかし、2021年に発売されたミライは決して安くはなかった。英国向けの価格は6万4995ポンド(約1270万円)で、現在トヨタから直接注文することはできない。

ヒョンデネッソ

ヒョンデは1990年代から燃料電池技術を開発しており、ネッソは同社初の量産水素自動車である。

英国価格はミライとほぼ同じ6万5995ポンド(約1290万円)で、パワートレインは最高出力163psと最大トルク40.2kg-mを発生する。0-100km加速は9.6秒。

ヒョンデ・ネッソ
ヒョンデ・ネッソ

ネッソは最大6.33kgの水素を貯蔵でき、1.56kWhのバッテリーに電力を供給する。航続距離は約610km。AUTOCARの英国記者が試乗したところ、その安定したドライビング・ダイナミクスと洗練された走行性能に感銘を受けた。

現在、英国の道路を走っているネッソは30台未満で、ミライと同様、現在は注文できない。

BMW iX5ハイドロジェン

BMWは水素技術を軸にトヨタとパートナーシップを結び、2030年までに何らかの形でiX5ハイドロジェンを市場投入する計画だ。

パワートレインは最高出力400psと最大トルク72.4kg-mを発生し、トヨタやヒョンデよりもはるかに強力だ。航続距離は約500km。

BMW iX5ハイドロジェン(プロトタイプ)
BMW iX5ハイドロジェン(プロトタイプ)

AUTOCARがプロトタイプに試乗したところ、快適で性能が高く、ほとんど量産モデルに近い状態であることがわかった。iX5ハイドロジェンは、BMWが水素の世界に参入する道を確実に開いている。

水素自動車のメリット/デメリット

水素自動車の長所

水素自動車に乗る最大のメリットの1つは、マフラーから水以外の排出ガスをゼロにできることだ。つまり、ガソリン車やディーゼル車よりもずっと環境負荷が低いということであり、厳しい排出ガス規制が導入されている都市部では特に歓迎されるだろう。

水素自動車はバッテリーEVよりも大幅に速く水素補給ができる。水素は地球上で最も豊富な元素でもある。

水素の補給はEVよりもはるかに速いが、水素ステーションの数の少なさが課題となっている。
水素の補給はEVよりもはるかに速いが、水素ステーションの数の少なさが課題となっている。

他のパワートレインよりも「燃費」が良いと考える人もいる。水素自動車は、水素に含まれるエネルギーの40~60%を使用でき、燃料消費を50%削減できる。1回の水素補給で約640km走行することも珍しくない。

また、EVとは異なり、水素自動車の航続距離は外気温の影響を受けない。

水素自動車の短所

水素自動車はドライバー視点では高効率で環境に優しいが、いくつかの欠点もある。

マフラーからの排出ガスはゼロかもしれないが、産業規模で水素を製造するには大きな環境上の課題がある。

大規模に水素を製造するには、かなりの量の化石燃料が必要だ。タイヤメーカー大手のピレリによると、水素1kgあたり10kgものCO2が発生するという。

再生可能エネルギーを利用した製造方法もあるが、現在のところ非常に高価である。例えば、デンマークは風力発電で、アイスランドは地熱発電で水素を製造している。

また、水素自動車は構造が複雑なために購入コストが高く、水素ステーションの数が少ないことも大きなデメリットとなっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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