最新「ミニやクリオ」に挑む5年目 アウディA1 35 TFSIへ試乗 総合力で応えるコンパクト!

公開 : 2024.12.14 19:05

普段使いで不満ないパワートレイン

それでは、実際に発進してみよう。A2最強の35 TFSIだとしても、際立つほど速いわけではない。とはいえ、3000rpm辺りでターボが効き始め、市街地での利用が中心のコンパクト・ハッチバックとして、普段使いでの不満はないはず。

6速MTはクラッチペダルが軽すぎ、ミートポイントが手前すぎる印象。ギア比がロングで、ちょっと勢いが足りない場面も。7速ATは変速が滑らかで、キビキビとした加速を引き出せる。ただし、高めの回転域でシフトアップされるタイミングは把握しにくい。

アウディA1 35 TFSI DSG(英国仕様)
アウディA1 35 TFSI DSG(英国仕様)

ブランドらしい活発さを求めるなら、積極的にアクセルペダルを傾け、変速していく必要がある。高負荷時のサウンドは、聞いていて心地良いものではないが。

より強力な仕様もあって良さそうだが、40 TFSIは英国では2年前に終了済み。これにはポロ GTIと同じ200psの2.0Lユニットが載り、0-100km/h加速を6.5秒でこなした。

30 TFSIは3気筒のビートを放ち、滑らかに回転。数字以上に元気に感じられる。反応は正確で、質感に荒っぽさはなく、6速MTとの相性も良いようだ。

自然で正確なステアリング 乗り心地は明確に硬い

シャシーは、ポロより明らかにタイト。短いホイールベースの割に落ち着きがあり、安定性は高い。優れたグリップ力と相乗し、高速域でも不安感のない回頭性を得ている。

ステアリングホイールへ伝わる感触は薄めでも、反応は自然で正確。ミニは少し過敏だと感じるドライバーには、丁度良さそうだ。シャシーの能力が高いだけに、ダイレクト感や重み付けが増せば、運転を一層楽しめるように思う。

アウディA1 35 TFSI DSG(英国仕様)
アウディA1 35 TFSI DSG(英国仕様)

スポーツサスが組まれるSラインでは特に、カーブでのアンダーステアを見事に抑制。侵入時にアクセルペダルを一気に戻すと、ラインを内側へ絞れる。リア側が流れることはないが、予想以上にコーナリングへ関与していける。

基本的には安全指向。ギア比がロングなMTでは、トラクションを超えるパワーを展開できるわけではない。ショートなATの方が、ホットハッチのように意欲的に扱える。

大径ホイールを履くSラインの乗り心地は、上質なデザインへ不一致なほど硬め。プラットフォームを共有するポロは、ソフトなサスペンションで市街地でも快適性が高いのだが。高速道路では、風切り音やロードノイズも大きいと感じた。

総合力で応えてきたA1 強みは少なくない

燃費は、7速ATの35 TFSIで、今回の平均が19.5km/Lとカタログ値を超えた。高速道路を穏やかに流せば、21.0km/L前後へ伸びるはず。ガソリンタンクは40Lと大きくないが、満タンで約800km走れる計算だ。

ちなみに、25 TFSIのカタログ値は5速MTで18.5km/L。6速MTの30 TFSIは、18.2km/Lがうたわれる。

アウディA1 35 TFSI DSG(英国仕様)
アウディA1 35 TFSI DSG(英国仕様)

英国価格は、約2万2000ポンド(約429万円)から。35 TFSIで望ましいオプションを選ぶと、3万ポンド(約585万円)を超える可能性がある。

ミニではポップ過ぎ、ポロではベーシック過ぎると感じるユーザーへ、総合力で応えてきたA1。2024年にも、低くない訴求力がある。高効率なエンジンに上質なインテリア、落ち着いたシャシーなど、強みは少なくない。

確かにSラインの場合、乗り心地は褒めにくい。内装を観察し始めると、安っぽいプラスティックが見えてくる。MTはギア比が長すぎ、滑らかに回るエンジンも、もう少しパワーが欲しいところではある。さらに、最新のクーパー Cの競争力は高い。

それでもA1は、まだこのクラスの実力派。新型ではないが、クリオや500をお考えなら、検討候補に加えてみてはいかがだろう。

◯:洗練され燃費の良いパワートレイン 表示が美しく反応の良いタッチモニター アウディらしい高級感のあるインテリア
△:ベースグレードの内装は少々物足りない ロードノイズが大きい 乗り心地の良くないサスペンション

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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