稀有な本格的「4シーター」 マセラティ・グランカブリオへ試乗 望めば不満なく速い550ps!

公開 : 2024.12.05 19:05  更新 : 2024.12.05 19:46

後席は大人2名でも快適 15秒でフルオープン

内装は、マセラティに相応しい上質な素材が中心。しかし、ドイツのプレミアム・ブランドを凌駕する水準、とはいえないだろう。

観察すると、プラスティック製のボタン類など、若干質感が届いていない部品も。製造品質は10年ほど前より上昇しているが、もう少し驚ける特徴が欲しい。

マセラティ・グランカブリオ・トロフェオ(英国仕様)
マセラティ・グランカブリオ・トロフェオ(英国仕様)

前席側の空間は、広々としていて快適。ステアリングコラムには、金属製のシフトパドルが備わる。シートは見た目が美しいものの、高い期待ほど快適ではないかもしれない。タッチモニターのグラフィックは、やや煩雑に思えた。

グランカブリオの強みの1つが、平均的な身長の大人2名が、後席へ快適に座れること。オープン状態なら、乗り降りもしやすい。クローズ状態では、身体を押し込む感じになるけれど。

ソフトトップは完全な電動。51km/hまでなら、走行中でも15秒で開閉できる。定員分の旅行カバンを運ぶ場合は、閉じることになる。格納されたソフトトップが荷室を侵食し、高さ方向が大きく削られるから。

望めば不満なく速い ボディの寸法や質量を実感

それでは、英国の公道へ出発。全長5m、車重1.9tのグランカブリオは、ドライバーが望めば不満なく速い。66.1kg-mの最大トルクで、積極的に速度を乗せる。

常用域でのエンジン音は、若干ディーゼルに似ている。しかし右足へ力を込めれば、突き抜けるような咆哮を鑑賞できる。吹け上がりは軽快で、シームレスに6500rpmを超え、8000rpmまでためらいなく回る。

マセラティ・グランカブリオ・トロフェオ(英国仕様)
マセラティ・グランカブリオ・トロフェオ(英国仕様)

8速ATの変速は、基本的に滑らか。電光石火ではないが、シフトパドルで任意のギアも選択できる。四輪駆動システムと電子制御リアデフが備わるが、制御は比較的シンプル。前後のトルク分配は、ドライブモードによって変化する。

コンフォートとGTモードでは、操縦系が軽くなり、スポーツとコルサ・モードでは重くなる。他方、乗り心地や操縦性が明確に変化するわけではない。後輪操舵システムは備わらず、カーブではボディの寸法や質量を実感する場面も多い。

スポーツ・モードでも、敏捷性や一体感が増すわけではない。入力への反応には、人工的な感覚も伴う。だが、ステアリングは正確。望み通りのスピードで、爽快に駆け回れる。

乗り心地は、ドライブモードでの変化が大きい。だがボディ剛性もあって、ソフト側でも若干のぎこちなさがあり、ハード側では荒れた路面による影響を抑えきれない。

大きな段差では、バックミラー越しにシャシーが僅かにしなる様子も観察できる。ルーフの上端からリアのヘッドレストへ、揺れが伝播していく。

燃費は、丁寧に運転して約10.5km/L。市街地など、日常的な条件では8.5km/L前後だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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