【ミシュランマンも太田勤務?】日本ミシュランが移転一周年・新社屋お披露目
公開 : 2024.11.25 07:05 更新 : 2024.11.26 20:48
昨年8月に本社機能を群馬県太田市に移した日本ミシュランが、新社屋『PARK棟』を取材陣に公開。太田の魅力と共に伝えた移転後1年の実態を、斎藤聡がレポートします。
風通しのいい意見交換が可能な空間
日本ミシュランタイヤは、2024年11月13日、太田本社内に建設した新社屋『PARK棟』をお披露目した。
同社は2023年8月1日に本社を東京都新宿区から事業開始の地である群馬県太田市に移転。須藤元代表取締役社長は、「この地にミシュランの知恵と経験を集結させて、群馬からイノベーションを起こしていきたい」と抱負を述べた。
今回のPARK棟の建設は、『風通しのいい意見交換が可能な空間を実現するため』としている。激しい変化や予測困難な状況が続く時代に、その困難をしなやかに乗り越えることのできる組織を構築するためには、社員同士がより多くの交流を持ち集合知を生むための『風通しのいい意見交換が可能な空間』が必要であり、PARK棟はまさにその象徴ともいえる施設だ。
最大の特徴は、スタイリッシュな見た目ながら、細部に渡り環境への配慮を目指した建物であること。コンテナ建築を採用したシンプルで合理的ながらも独創的な設計となっている。設計施工は群馬県内の業者が行うことで搬入マイレッジの削減を実現したほか、内装処理や資材消費を抑え、さらに遮熱効果の高い部材などを使うことで冷暖房によるCO2の削減も図っている。
コンテナと鉄骨のハイブリッド構造で、コンテナを井桁のように積み、コンテナ特有の小さなスペースとその間に大きな吹き抜けを作ることで、社員同士のコミュニケーションだけでなく、集会や会合、会議も可能な空間を作り出している。しかも、立体的に人の視線が交差し、階が異なっても交流しやすい設計なのだ。
従来の太田本社にはなかった『集合知』を生み出す新しい空間として機能することが期待され、すでに使用が始まっているが、社員からの評判は上々。特に解放感あるテラス席は人気だそうで、ソファ席や照明を抑えた空間など、ひとつの建物の中でいくつもの表情を楽しめるようになっている。
社員の自立した自由な働き方を推進
一般的に本社移転は『社屋を移転して社員を移動すること』と捉えられがちだが、実際にはむしろその後のこと、例えば地域との関係性の構築や、働く人の環境の整備・配慮が重要だということを、日本ミシュランは示している。
本社移転によるメリットは、都市機能停止のリスク回避、知材の分散や分散投資を一元化できること、勤務地ごとに必要だったキャリア選択を統一できること、地域協業・キャリア協業の機会増などが挙げられる。群馬県は台風や土砂災害、震度4以上の地震が少なく、東京と比べて産官学連携もスムーズで、「太田市に移転し、思った以上に地域に歓迎してもらえているのを感じる」と笑顔を見せた。
一方で社員側には、生活拠点の移動、生活様式の変化など、社会生活の基盤の変更を余儀なくされる点が問題となる。
そこで同社は、通勤サポートの充実として、通勤時に特急・高速道路の使用を可能にし、以前本社があった新宿からシャトルバスを運行。さらに、特急やシャトルバスでの移動中の仕事を勤務時間と換算したり、部署と個人の裁量によって出社日数決定(平均週に2~3日)するなど、社員の自立した自由な働き方を進めている。
また、太田市内のホテルの法人契約、本社近隣に社宅を準備するなど、環境を整えることで、地方本社移転のデメリットを大幅に改善した。