【オフロードでは不思議体験!】メルセデス・ベンツ伝統のGクラスにEVはアリ?

公開 : 2024.11.26 11:45

メルセデス・ベンツ伝統のクロカンモデルである『Gクラス』に、BEVの『G580 with EQテクノロジー』が追加されました。西川昇吾が新たなメカニズムを解説するとともに、試乗レポートをお届けします。

オフロード性能を求めたからこそ

本格クロカンモデルとして長い歴史を誇るメルセデス・ベンツGクラスに、初のBEVモデル『G580 with EQテクノロジー』が加わった。日本へ最初に導入されるのは『エディション1』と呼ばれる、いわゆるファーストエディションで、AMGラインパッケージが標準装備となっているほか、専用装備が備わっている。

発表直後からその場でスピンターンをする『Gターン』が話題となっているが、これを可能とするのはそれぞれのタイヤを駆動する4基のモーターを搭載し、独立制御できるからだ。もちろんこのために4モーター、BEVが用意されたのではなく、クロカンモデルとしてのさらなる高みを目指すためというのが、メルセデス・ベンツの主張だ。

メルセデス・ベンツGクラスに、初のBEVモデル『G580 with EQテクノロジー』が加わった。
メルセデス・ベンツGクラスに、初のBEVモデル『G580 with EQテクノロジー』が加わった。    神村聖

その証拠に、850mmの渡河性能、250mmの最低地上高、32度のアプローチアングル、30.7度のデパーチャーアングルは、他のパワーユニットよりも大きな数値となっている。一般的なBEVモデルと比べても大容量な116kWhというバッテリーはラダーフレームに組み込まれ、オフロード走行を想定して26mmという厚みのカーボン素材でガードされている。

最高出力587ps、最大トルク1164Nm(118.78kg-m)という超弩級のスペックは、G63の585ps、850Nm(86.7kg-m)を上まわるもの。しかし車重は3120kgもあり、0-100km/h加速は4.7秒と、G63の4.3秒には一歩及ばない。スペックを見る限り、単純にBEVモデルを追加したというより、ハイパフォーマンスモデルが新たに加わったという印象だ。

4モーターBEVならではのアドバンテージ

そんなG580をオフロードとオンロード、どちらでも試す機会を得た。まずはオフロードからだったが、オフロード走行の経験が豊富ではない筆者のドライブでも、G580は簡単に急斜面を登っていった。BEV特有の低速からトルクフルな駆動は、オフロード走行時のアクセルコントロールがしやすく、前日の雨の影響で濡れた岩場など滑りやすそうなシーンもあったが、G580はそれをいともせず進む。これは緻密なトルク制御が可能な、4モーターBEVならではのアドバンテージと言える。

そしてG580には、オフロードクール機能が備わっている。これはアクセル操作をせずとも低速の一定速度で走行してくれるもので、パドルシフトによって速度の切り替えが可能だ。これにより、急斜面での上り下りがスムーズであった。

伝統的な本格クロカンモデルは他メーカーにも存在するが、Gクラスはいち早くBEVモデルを投入。
伝統的な本格クロカンモデルは他メーカーにも存在するが、Gクラスはいち早くBEVモデルを投入。    神村聖

また、驚いたのは静粛性の高さだ。BEVだから当たり前かもしれないが、これはオフロードで重要な性能になると感じた。タイヤの接地感、路面や周辺状況を把握するのに、外部から聞こえる音がオフロードでは役立つと、BEV化によって気が付かされたのだ。

伝統的な本格クロカンモデルは他メーカーにも存在するが、その中でもGクラスはいち早くBEVモデルを投入した。それはより高いオフロード性能を求めた結果という説明があったが、より多くのドライバーにとってメリットとなることを実感した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    西川昇吾

    1997年、富士スピードウェイのほど近くに生まれる。必然的に、モータースポーツとともに幼少期を過ごす。当時愛読した自動車雑誌の記憶に突き動かされ、大学時代から自動車ライターとして活動を開始。卒業後、動画系の自動車媒体に所属したのちフリーとして独立。地元の地の利を生かし、愛車のNBロードスターでのサーキット走行や、多彩なカテゴリーでのレース参戦を積極的にこなす、血気盛んな若手モータージャーナリスト。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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