【環境に優しい小さなジープ】専用セッティングが効果的!電気なアベンジャーは自然なフィーリングが魅力

公開 : 2024.11.27 11:45

ついにジープ・ブランドから登場したBEV、『アベンジャー』が日本に上陸しました。ステアリングを握る機会を得た内田俊一が、プロダクトジェネラルマネージャーのコメントを交え、その印象をレポートします。

新規ユーザーにうけているわけ

9月26日の発売以降、取材時点で100台を超える受注があったという『ジープアベンジャー』。そのユーザーの多くは、これまでジープ・ブランドを所有したことのない新規ユーザーだという。その理由を「小さくて乗りやすい、そして環境にも優しいクルマということが購入に繋がっています」と話すのは、ステランティス・ジャパンでジープのプロダクトジェネラルマネージャーを務める渡邊由紀さんだ。

「ジープというブランドは好きでも、未だに大きくて無骨で燃費もあまり良くないイメージがあるようです。しかしアベンジャーであれば乗りやすいし、環境にも優しいという点で新規ユーザーの購入に結びついています」と戦略が上手くいっていることを明かす。欧州にあるマイルドハイブリッドや内燃機関ではなくBEVのみの導入理由は、レネゲードなどとの差別化にもあったようだ。

9月26日に発売されたジープ初となる電気自動車(BEV)『アベンジャー』。
9月26日に発売されたジープ初となる電気自動車(BEV)『アベンジャー』。    山本佳吾

気になるのは今後のラインナップ。きょうだい車ともいえるフィアット600eは既に2025年にマイルドハイブリッド導入を宣言。アベンジャーはどうかといえば、渡邊さんは率直に、「もちろん検討はしている」という。しかし、「600eのように具体的にいつとはまだ言えない、可能性を検討している段階」とのことだった。

共通のプラットフォームながら

そのアベンジャーに乗り込んでみよう。渡邊さんが話していたように、外観はもちろんシートに座ってもコンパクトに感じる。それは前方の見晴らしと見切りの良さから感じられるものだ。スタート&ストップボタンを押して電源を入れ、ゆっくりとアクセルペダルを踏み込むと、軽いモーター音とともにアベンジャーはスムーズに走り出した。

そこで気付いたのは大きくふたつ。ひとつはステアリングの軽さだ。大げさにいうと、軽すぎてどこまでもくるくると回るような気がしてしまう。もちろん速度域が高くなればしっかりとした重さは感じられるが、交差点などの右左折時に速度を落として曲がろうとすると、それまでの重さが嘘のように軽くなるので、その違和感は最後まで拭えなかった。

前方の見晴らしと見切りの良さもあり、シートに座ってもコンパクトさを感じるアベンジャー。
前方の見晴らしと見切りの良さもあり、シートに座ってもコンパクトさを感じるアベンジャー。    山本佳吾

同時にハザードランプのスイッチがセンタースクリーン下で、ほかのスイッチとともに配されているのも気になった。とっさの時に迷って押せないのでは意味がないので、改善を望みたい部分だ。

もうひとつは600eと共通のプラットフォームに関連することで、これは旧PSAの『e-CMP2』と呼ばれるB/Cセグメント用をベースに電動化も踏まえたもの。アベンジャーでは60%以上が専用チューニングされ、それが非常に効果的に感じた。

具体的にはフロアまわりの剛性が高いのだ。例えば歩道を横切る際の段差を超えたり、あるいは、交差点を曲がるときでもいい。そういったシーンで、よりしっかりとした印象をドライバーに与えてくれる。もちろんジープだから剛性が高いのは当然といえば当然なのだが、ひとつのプラットフォームを使い分け、味付けを大きく変えてくるあたりはジープとしてのこだわりであろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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