過走行車は避けるべき? 電気自動車はガソリン車より低耐久? 英国の中古車事情を調べてみた

公開 : 2024.12.10 19:05

過走行車は避けるべきなのか? 電気自動車はガソリン車より耐久性が低い? ドイツ車はボディやインテリアが高耐久 英国を走るクルマの半数は初登録から10年以上経過 英編集部が取材

ボディやインテリアの耐久性が高いドイツ車

2台の7代目フォルクスワーゲン・ゴルフが並んだ、下の写真。どちらも2019年式で5年落ち。どちらが、走行距離は短く見えるだろうか。

一方は7万8800km。まだ現役で使えると考えるだろう。もう一方は、20万7600km。多くの人が、購入をためらう距離ではないだろうか。

フォルクスワーゲン・ゴルフ(Mk7/2019年式/英国仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ(Mk7/2019年式/英国仕様)

パッと見た限り、どちらが沢山の距離を走ってきたのか、写真ではわからないと思う。現車へ近寄ってみても、塗装の状態は大きく違わない。ドアはゴルフらしいバフッという音で閉まり、内装のガタツキもないようだ。

この2台は、グレートブリテン島の南岸、サウサンプトンに店を構えるディーラーが販売する中古車。経営者のポール・トゥーマー氏は10年以上の経験を持つが、一定の基準を満たせば、10万マイル(約16万km)以上でも躊躇せずに仕入れると話す。

「整備履歴を確認でき、状態が悪くなければ、喜んで落札しますね。ドイツ車なら」。トゥーマーが笑う。

「ボディやインテリアの耐久性は高く、軽い不調はだいたい整備で解決できます。日本車や韓国車も、長い距離には良く耐えますよ。でも内装はそうでもなく、距離なりのクタビレた印象になりがちです」

「メーカー問わず、小さなガソリンエンジンには用心します。経験的に、信頼性に疑問が残ります。過去には16万km以上を重ねた、2018年式フォードフィエスタ 1.0エコブーストを販売しましたが、それは6万5000kmでエンジンを1度載せ替えていました」

英国を走るクルマの半数は初登録から10年以上

そう振り返るトゥーマーは最近、先述の2019年式ゴルフ 1.6TDIを仕入れた。ディーラーで整備を受け続けてきたワンオーナー車で、タイミングベルトは交換済み。オークションの落札額は、7995ポンド(約156万円)だった。

走行距離が半分なら、1万2000ポンド(約234万円)前後になるらしい。「価値はあっても、関心を持つ業者は少ないですね。ゴルフは珍しくないですから。それに、多くの人は過走行車を好みません。4000ポンド(約78万円)安いとしても」

英国で中古車ディーラーを経営する、ポール・トゥーマー氏(左)
英国で中古車ディーラーを経営する、ポール・トゥーマー氏(左)

英国の政府機関の情報では、2022年に登録された自動車は4030万台。その約900万台が、走行距離16万km以上だったという。新車価格の高騰で、1台の利用期間は伸びつつある。2台に1台は、初登録から10年以上が過ぎている。

インターネットの中古車サイトを調べてみると、4万5000台以上が16万km以上。32万km以上へ絞っても、約700台が出てきた。

33万km以上走ったアウディA5 スポーツバック TDIのオーナー、ジョン・シャーロック氏にお話を伺った。「買った時点では32万km。問題なく走る状態でしたよ」

「トラブルは避けたかったので、完全な整備をお願いしました。主な部品は交換済みです」。エンジンオイルとトランスミッションフルード、クランクシャフトプーリー、タイミングベルト、インジェクター、ブレーキ一式が新調された。

これらは、消耗品といえる範囲。しかし一度に交換すると、かなりの金額になる。過走行車が好まれない理由といえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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