過走行車は避けるべき? 電気自動車はガソリン車より低耐久? 英国の中古車事情を調べてみた

公開 : 2024.12.10 19:05

電気自動車はガソリン車より耐久性が低い?

「(過走行車は、)一般的に多くの修理や整備が必要になります。人件費や部品代の高騰で、コストの上昇も懸念されます」。英国でクルマの履歴を管理する民間企業、キャップHPI社の担当者、ジェレミー・イェー氏が説明する。

「またCOVID-19の流行時に、公共交通機関を避ける目的で、安い中古車の需要が高まりました。しかし、それらが最近は手放され始めています。結果として、距離の長いクルマは供給過剰な状態にあるようです」

フォルクスワーゲン・ゴルフ(Mk7/2019年式/英国仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ(Mk7/2019年式/英国仕様)

バッテリーEV専門の中古車ディーラーを営む、EVエキスパート社のマーティン・ミラー氏は、3年落ちで走行距離10万km前後の中古車が増えつつあると話す。英国のユーザーの多くは、ガソリン車より耐久性が低いと考えているらしい。

「ガソリン車の場合、可動部品は一般的に2000点ほど。しかし、電気自動車は20点くらいしかありません。10万kmなど、電気自動車には取るに足らない距離だと思います」

「24万km以上走ったテスラポールスターは、珍しくありません。過走行のバッテリーEVで心配すべき点は、最近はブレーキとサスペンション、タイヤくらい。誤解されている方が多いんです」。ミラーが説明する。

バッテリーEVには回生ブレーキが備わり、摩擦ブレーキの負担は小さい。パッドとディスクを交換せずに、38万km以上走れたBMW i3のユーザーがいるほどだ。

経年で容量が減っていく駆動用バッテリー

ただし、年式には左右される様子。「駆動用バッテリーは年間2%前後、使える容量が減ります。ですが、急速充電が繰り返されても、劣化が促されることはないようです。英国は気候も暑くないので、発熱の心配も低いといえます」。ミラーが続ける。

車両の位置情報や走行データを分析する企業、ジオタブ社によるレポートは、彼の主張を裏付ける。5000台のバッテリーEVを追跡した結果、駆動用バッテリーは毎年1.8%、平均で容量が減っていくことが判明したそうだ。

フォルクスワーゲン・ゴルフ(Mk7/2019年式/英国仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ(Mk7/2019年式/英国仕様)

2019年の調査では、年間2.3%だった。駆動用バッテリーの技術向上による結果だと、同社は結論付けている。また経年劣化は一定して生じるものの、走行距離の長短で、容量の減少率が変化する傾向は見られないという。

空冷式より、液冷式の方が容量の減少は抑えられる。年間1%程度は違うという。

取材後に記事をまとめている途中、トゥーマーから連絡があった。ある人物がやってきて、20万7600kmの7代目ゴルフを買っていったという。走行距離を伝えても、肩をすくめた程度で、迷う様子はなかったらしい。

契約前に試乗した彼は、状態へ満足していたとのこと。信頼できる販売店と出会えれば、走行距離だけを見て不安視する必要はないといっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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