航続距離700kmの商用バン 72時間で水素ステーション設置も ルノーの水素燃料電池プロジェクトとは

公開 : 2024.11.26 06:25

ルノーは米プラグ社と共同で水素燃料電池車の開発を進めている。コンテナ式の水素ステーションは短時間で設置でき、欧州における水素の普及につながる可能性がある。

商用車から始める水素普及

水素燃料電池のビジネスは商用車、特に大型トラックでの使用を想定して成長を続けている。新たなプロジェクトの1つが、先日ハノーバーで開催されたIAAトランスポーテーション・ショーで展示された、新型ルノー・マスターH2テック・プロトタイプだ。

この車両は、ルノーと米国の燃料電池企業であるプラグ社との合弁会社ハイビア(Hyvia)が開発したものだ。ハイビアは欧州全土へ展開する水素ステーションも開発している。

ルノー・マスターH2テック・プロトタイプと水素ステーション「ハイウェル」
ルノー・マスターH2テック・プロトタイプと水素ステーション「ハイウェル」

このプロジェクトの重要な点は、商用車での利用拡大とともに水素補給ネットワークの拡充につながる可能性があることだ。ハイビアの水素ステーション「ハイウェル」は、「コンテナ化され、再配置可能」であるため、小規模な工事で比較的簡単に設置できるとされている。

ステーション1基で1日100kgの水素を供給でき、これは20台分以上に相当する。

マスターH2テック・プロトタイプのWLTP航続距離は700kmで、ガソリン車やディーゼル車と同じくらい素早く水素を補給できる。47kWの燃料電池と20kWhのバッテリーを組み合わせた「デュアルパワー」アーキテクチャーを採用している。

この燃料電池はプラグ社の技術をベースにした新世代システムで、フランスのフランにあるハイビア工場で生産されている。

燃料電池は通常のバッテリーと同じように陽極と陰極を持ち、陽極で水素分子を陽子と電子に分解する。陽子は超薄膜を通り、燃料電池に送り込まれた空気中の酸素と結合し、熱とともに副産物として水を生成する。

電子は回路に流れ込み、駆動用モーターに電力を供給する。燃料電池と小型バッテリーの組み合わせは、BEVの大型高電圧バッテリーに取って代わるものだ。

BEVより長い航続距離と素早いエネルギー補給が利点だが、運転感覚はBEVと変わらない。通常、自動車用燃料電池はバッテリーと組み合わされ、加速に必要なエネルギーの貯蔵を行う一方、燃料電池はバッテリーを充電するための安定した電力を生成する。

ハイビアのシステムで生成された熱はキャビンの暖房に使用される。床下の水素タンクは必要な航続距離に応じて7.5kgまたは9kgの容量が選択できる。

走行はACモーターで行う。BEVや従来のハイブリッド車と同様に、減速時に回生ブレーキによってエネルギーを回収することができる。

来年末から、マスターH2テックはフランスのバティリーにあるルノー・グループの工場で生産され、ルノーが販売する予定だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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