高校生の「デートカー」に活躍 ポンティアックGTO(2) 現代的なモディファイで完璧な走り

公開 : 2024.12.14 17:46

デートカーとして活躍した元祖マッスルカー

このハードトップクーペには、トロットの考えで、本来はなかったアンチロールバーがリア側へ組まれている。ポンティアックは、1970年式から正式に採用を決めるが、その結果大幅に操縦性は良くなったという。

初期のGTOでもアンチロールバーは試されたというが、高速走行時のステアリングの安定性は悪化し、乗りにくくなったとか。確かにトロットのGTOは、操舵時の感触が若干優れない。正確性でも、グリーンのコンバーチブルには届いていない。

ポンティアックGTO ハードトップクーペ(1966年式/北米仕様)
ポンティアックGTO ハードトップクーペ(1966年式/北米仕様)

サスペンションのアライメントと、クイックなレシオのステアリングラックを組むことで、恐らく挙動は改善するはず。オーナーズクラブの中心人物がいる、オートポンティアック社へ頼めば、快く対応してくれるだろう。

とはいえ、GTO ハードトップクーペの走りは素晴らしい。4速MTのシフトレバーは、素早くは動かせないものの、正確にゲートへ入る。3速を飛ばし、2速から4速へ入れれば、自在にスピードを調整できる。渋滞や交差点以外、シフトダウンする必要はない。

フロントシートはバケットタイプ。リアシートは巨大なベンチで、ガールフレンドといちゃつくのにも問題ないほど広い。羨ましいことに、高校生のオーナーも当時は少なくなく、元祖マッスルカーはデートカーとしても活躍した。

現代的なモディファイにより完璧なGTOへ

そんなナンパなイメージが付きまとうGTOだが、ベースとなったポンティアック・テンペストは、レースでも活躍している。限定だったカタリナ・スーパーデューティ421用のエンジンを積み、1963年のデイトナ・コンチネンタル 3時間レースへ挑んでいる。

ここには、2台のフェラーリ250 GTOも参戦。4位と5位でフィニッシュしたのに対し、優勝を掴んだのは、ポール・ゴールドスミス氏が駆ったテンペストだった。ジョン・デロリアン氏はこの戦績に驚き、ビッグブロックへの置換に確信を抱いたに違いない。

レッドのポンティアック・テンペスト・ルマン GTO コンバーチブルと、ブラックのポンティアックGTO ハードトップクーペ
レッドのポンティアック・テンペスト・ルマン GTO コンバーチブルと、ブラックのポンティアックGTO ハードトップクーペ

マッスルカー競争の口火を切った、2台のGTO。筆者は、美しいスタイリングを理由に、ブラックのハードトップクーペへ強く共感する。

だがレッドのコンバーチブルには、ステアリングやオートマティックなどへ現代的なモディファイが施され、ずっと親しみやすい。まさに、完璧なGTOだと感じた。デロリアンが思い描いた、グランツーリスモ・オモロガートの姿へ近いのではないだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    コリン・グッドウィン

    Colin Goodwin

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ポンティアックGTOの前後関係

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