基本メンテナンスで100年間! HEツーリッター・スポーツ(2) 1924年を感じさせない製造品質

公開 : 2024.12.21 17:46

年式を感じさせない製造品質と滑らかさ

イグニッションをオンにし、スターターのボタンを押す。エンジンはすぐに目覚め、太いエグゾーストパイプから低い燃焼音が響き出す。ベントレー 3リッターのサウンドに、近いといえなくもない。

トランスミッションは、100年前の機械だと考えれば操作が楽しい。クラッチペダルは信じられないほど軽く、ミートポイントを掴みにくいが、ダブルクラッチを挟めば変速は滑らか。シフトレバーの位置が悪く、3速と4速では内装に手が挟まれそうになる。

HEツーリッター・スポーツ(1922〜1925年/英国仕様)
HEツーリッター・スポーツ(1922〜1925年/英国仕様)

当時のHE社は、ツーリッターを「羽ばたく鳥のように素早い」と表現した。現代の水準では速いといえないものの、80km/hでの巡航は予想以上に快適。トルクは太く、勾配に差し掛かっても速度を保てる。

エンジンは、回転を引っ張ると心地良いサウンドを放ち始める。だが、トランスミッションのギアノイズが隠しがち。ブレーキは効きが弱い。かなり踏み込まないと、満足できる制動力は得られない。この辺りは、当時のベントレーに及ばないだろう。

ステアリングホイールは軽く回せる。旧式なウォーム&ナット式のラックは、適度なレシオで、遊びは大きいが予測しやすい。フロントアクスルの安定性は低いとはいえ、1世紀も前のクラシックカーを運転することは大きな喜びだ。

製造品質の高さや、滑らかな各部の動きなどは、むしろ年式を感じさせないほど。5年間保証というサービスも、HE社にとっては無理のある内容ではなかったのかもしれない。技術力の高さに、唸ってしまった。

HEツーリッター・スポーツ(1922〜1925年/英国仕様)

英国価格:595ポンド(新車時)/12万5000ポンド(約2438万円/現在)以下
生産数:−台
全長:4114mm
全幅:1626mm
全高:−mm
最高速度:104km/h(予想)
0-97km/h加速:−秒
燃費:7.8-8.5km/L(予想)
CO2排出量:−g/km
車両重量:−kg
パワートレイン:直列4気筒1982cc 自然吸気サイドバルブ
使用燃料:ガソリン
最高出力:13ps
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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