一目惚れからの即決購入! ランチア・フルビア・クーペ(1) ラリーで活躍したV4エンジン

公開 : 2024.12.14 09:45

今でも現実的な価格で探せるフルビア・クーペ ラリーで活躍したバンク角13度のV4エンジン スピード感は実際以上 リズムを掴むとひたすら楽しい 英編集部の愛車でスコットランドへ

今も現実的な価格で探せるフルビア・クーペ

このランチアの写真が、純白のホリゾントを背景に、こうこうとライトが照らすスタジオで撮られていたら。中古車サイトの一覧で、筆者の目にとまることはなかったはず。

淡いブルーに塗られた小さなクーペは、青々とした牧草地が奥に広がる、葡萄棚を背景にしていた。イタリア南部、カンパニア州にさす陽光のもとで。ひと目で心が奪われたことは、説明するまでもない。

ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3S(1974年式/欧州仕様)
ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3S(1974年式/欧州仕様)

気が付けば、グレートブリテン島に連れてきたいと考えていた。雨で霞んだ海岸線を望む、うねる道を走りたいと願っていた。

筆者は、生粋のイタリア車ファン。ランチア・マニアだと思っている。ストラトスやラリー037、デルタ・インテグラーレなど、虜になってきたモデルは数多い。しかし2+2のフルビア・クーペは、これまで不思議と心に響くことがなかった。

とはいえ、エレガントなスタイリングに特徴的なV型4気筒エンジン、ラリーで活躍した歴史を持つ割に、現実的な価格で売買されていることが気にはなっていた。この1974年式の1台は、換算すると当時7900ポンドで売りに出ていた。

バンク角13度のV4エンジン 高性能なHF仕様

フルビア・クーペは、1965年に発売。スタイリングを担当したのは、ランチアのピエロ・カスタニェロ氏で、スクエアなボディのサルーン、フルビア・ベルリーナと多くの技術を共有していた。

バンク角13度の狭角なV4エンジンは、チェーンで駆動されるツインカムで、アルミニウム製のヘッドを採用。搭載位置はフロントアクスルより前で、45度も傾いている。排気量は、当初81psの1216cc。1231cc、1298cc、1584ccと、徐々に拡大していった。

ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3S(1974年式/欧州仕様)
ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3S(1974年式/欧州仕様)

フロントアクスルへ駆動力を伝えるトランスミッションは、オールシンクロの4速マニュアル。前後とも、ディスクブレーキが備わった。

サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがビームアクスル。どちらも、横向きに配置されたリーフスプリングが支える。

1216ccに追加された、高性能仕様の初期のHFには、専用カムとマニフォールド、キャブレターが組まれ、最高出力を7ps上昇。ドアやボンネットなどを中心に125kg軽量化され、車重は825kgに仕上がっていた。

1969年には、5速MTが組まれた1.6LのラリーHF仕様が登場。7インチの大きなヘッドライトが与えられ、「ファナローネ」という愛称で呼ばれた。最高出力は116psで、0-100km/h加速は9.9秒。1258台の限定で、大きな話題を集めた。

ヴァリアント1016という名の、更なる特別仕様も存在した。専用カムと高圧縮比化で、15psが上乗せされていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ウェバー

    Richard Webber

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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