一目惚れからの即決購入! ランチア・フルビア・クーペ(1) ラリーで活躍したV4エンジン

公開 : 2024.12.14 09:45

期待どおり素晴らしい状態だった1台

そして、1969年はランチアフィアットに買収された年だった。新たな資金を獲得し、フルビア・クーペは、1970年にシリーズ2へアップデートしている。5速MTが標準になり、デュアルサーキット・ブレーキを獲得。ステアリングラックにも変更を受けた。

一方、フィアット由来の部品が多く採用されてもいた。内装はダウングレードし、HF仕様はボディパネルがアルミではなくなった。英国仕様は、基準に合わせてヘッドライトの位置も変更されていた。それでも、ランチアのクーペがあるだけマシといえた。

ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3S(1974年式/欧州仕様)
ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3S(1974年式/欧州仕様)

スタイリングとインテリアが僅かに新しくなった、進化版となるシリーズ3は1973年に登場。だがその前年、1972年には、フィアット・エンジンのランチア・ベータ・クーペが発売されている。フルビアは、1976年に生産が終了した。

これらの情報は、2017年9月に、ナポリへ向かう飛行機で確認したもの。ベスビオ山の麓を巡り、アマルフィ海岸に見惚れながら、ジェラートの甘さを堪能した。夢に描いたような、フルビア・クーペと出会うための旅だった。

対面した念願のランチアは、期待どおり素晴らしい状態だった。ブルー・アニャーノの塗装は12年前に塗り直され、艶を保っていた。目立ったサビもなかった。内装は使い込まれた感があったものの、基本的に無傷。発進しても、怪しいノイズは放たなかった。

オイルやフルード類、消耗部品は交換

もちろん即決。7500ポンドに値切って、自分のクルマになった。650ポンドを追加し、オランダ・アムステルダムまでの輸送を依頼。3週間後にそこで再開し、フェリーに載せてグレートブリテン島へ渡った。

輸入の手続きは簡単だった。関税はかからず、英国歳入関税局にクルマのことを報告し、運転免許庁(運輸局)に車検証明を提出した程度で済んだ。

ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3Sの初回登録時の書類
ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3Sの初回登録時の書類

英国では、40年前のクルマには車検が免除されている。それでも、自主的に精密な点検は受けることにした。法律上は、クラシックカーは走行可能な状態に保つ必要がある、と記されるだけだが、トラブルは未然に防ぐべきだ。

筆者が作業を依頼したのは、ランチアを専門とするカークラフト・スコットランド社。経営者のニール・ジェフリー氏は、フルビアでラリーに出場した経験を持つ。

点検を終えた彼は、目立った不備はないと告げてくれた。しかし、オイルやフルード類の交換は必要だった。エンジンとトランスミッション、サスペンションのマウント、点火プラグ、ドライブシャフトブーツ、ブレーキラインなどは新調された。

燃料フィルターと燃圧調整のレギュレーターはオーバーホールされ、古いアンダーコートは剥がし再処理。バルブタイミングとクリアランス、2基のソレックスキャブレターも調整された。ガレージを出ると、めっきり走りがスムーズになっていた。

この続きは、ランチア・フルビア・クーペ(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ウェバー

    Richard Webber

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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