リズムを掴めばひたすら楽しい! ランチア・フルビア・クーペ(2) 英スタッフを夢中にする活発さ

公開 : 2024.12.14 09:46

リズムを掴むとひたすら楽しい 最高の時間

ペダルの配置は、ヒール&トウしやすい。エンジンは素早く反応し、選んだギアで意欲的に駆け回れる。アシストが備わるブレーキは、ペダルに感触を殆ど伝えないものの、制動力は調整しやすい。しっかり踏めば、しっかり効く。

旧式なウォーム&ローラーのステアリングラックは、高めの速度域で締まりが増す。反応はクイックすぎない。大胆なステアリング操作は、サスペンションの安定性を乱す。先を読んで切る角度を滑らかに決めれば、小気味いい回頭性で満たされる。

ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3S(1974年式/欧州仕様)
ランチアフルビア・クーペ・シリーズ3 1.3S(1974年式/欧州仕様)

タイヤは肉厚。カーブの途中に路面の隆起があっても、ラインは狂わない。フロントエンジンの重量配分に、165幅のタイヤでも、アンダーステアはほぼない。リズムを掴むと、ひたすら楽しい。

これでラリーを戦った、かつてのドライバーのスキルには舌を巻く。リアタイヤのグリップを崩し、絶妙な操縦で限界ギリギリのコーナリングを続けたのだから。

フルビア・クーペは、素晴らしいクラシックカーだ。手と足の動きを考え、クルマを操ることで、巨大な充足感を享受できる。乗り心地はしなやか。細いピラー越しに、素晴らしい景色を眺められる。最高の時間を過ごせる。

エンジンルームは広々。主な部品へアクセスしやすい。スペアパーツの入手は、さほど難しくない。英国では、オーナーズクラブの活動も活発だ。

実用性も悪くない 筆者の給料でも維持できる

フルビア・クーペは、実用性も悪くない。筆者の身長は190cm近いが、フロントシートを目一杯下げれば、空間は充分。リアシート側は潰れてしまうが。荷室も広い。スペアタイヤを載せると、だいぶ狭くなるとはいえ。

普段使いでの燃費は、10.0km/Lを少し超える。燃料タンクは38Lだから、こまめな給油は必要だけれど。英国では、クラシックカーの自動車税は免除される。任意保険の金額も、決して高いわけではない。

ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3Sと筆者、リチャード・ウェバー
ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3Sと筆者、リチャード・ウェバー

ボディを保護する目的で、ガレージにはスチール・フレーム付きの伸縮カバーを追加した。うっかりスペアパーツを落としても、塗装を傷をつけずに済む。

やり残しの作業は沢山ある。タイミングチェーンは、そろそろ交換した方が良いだろう。油圧は最近低めだし、稀にエンジンオイルの燃えた白煙が、排気ガスに混ざることがある。フロントのリーフスプリングは、固定が甘くなってきている。

とはいえ、お察しの通り、筆者はこのクルマに夢中だ。活発に走るし、とても美しい。ラリーと結びつく歴史も、好きな気持ちを後押しする。なんとか、筆者の給料でも維持できている。

ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3S(1974年式/欧州仕様)のスペック

英国価格:2057ポンド(新車時)/1万7500ポンド(約341万円)前後(現在)
全長:3975mm
全幅:1555mm
全高:1300mm
最高速度:167km/h
0-97km/h加速:11.9秒
燃費:9.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:970kg
パワートレイン:V型4気筒1298cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:91ps/6000rpm
最大トルク:11.5kg-m/5000rpm
ギアボックス:5速マニュアル(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ウェバー

    Richard Webber

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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