らしさが詰まった「5ドア」 ミニ・エースマン Eへ試乗 1クラス上のインテリア 強みが沢山

公開 : 2024.12.11 19:05

ベーシックなEでも充分以上の勢いで加速

公道へ出てみると、走りもしっかりミニ。ベーシックなエースマン Eでも、0-100km/h加速7.9秒と、充分以上の勢いで加速してくれる。市街地だけでなく、高速道路の合流などでも頼もしい。

エースマン SEは更に鋭いが、コーナリング中にパワーを加えると、ラインが乱れるトルクステアが生じる。路面が濡れていると、発進時にホイールスピンすることも。ちょっとヤンチャな感じだが、これを好ましいと感じる人もいるだろう。

ミニ・エースマン SE(英国仕様)
ミニ・エースマン SE(英国仕様)

回生ブレーキの効きは、アダプティブと、強・中・弱の3段階に調整できるが、タッチモニター上で切り替える必要がある。最も強力にしても、ブレーキペダルを踏まずに済む、ワンペダルドライブにはならない。

アダプティブ・モードは、やや制御に一貫性を感じにくかった。だが、全般的にスピードの調整はしやすいといえる。

操縦性は、スタイリングやインテリアに加えられる、もう1つの強み。ひと回り大きいカントリーマンと異なり、小柄なボディはキビキビと身をこなす印象と一致する。ロータリー交差点をクルリと回り、狭い車線でも導きやすい。

最も穏やかなドライブモード(エクスペリエンスモード)を選んでも、ステアリングはクイック。しかし緊張感を伴うわけではなく、運転が楽しい。ミニだけといえる、小気味いい体験を味わえる。

乗り心地は落ち着かない 欲しくなる強みは沢山

そのかわり、乗り心地は褒めにくい。アダプティブダンパーはオプションにもなく、路面次第では落ち着かない印象を拭えない。特に垂直方向の動きが目立っていた。僅かに増える車重の影響か、パワフルなSEの方が、Eよりしっとりしているようだった。

とはいえ、減衰特性は良くチューニングされ、強い衝撃が伝わることはない。長距離ドライブは、ライバルより疲れるかもしれないが。

ミニ・エースマン SE(英国仕様)
ミニ・エースマン SE(英国仕様)

小回りは、想像するほど利かない。最小回転直径は、11.1mとこのクラスでは大きめ。LBXジープアベンジャーは、約10.5mとなっている。エースマン Eの航続距離は、肌寒い気温の中で走らせて210kmだった。

英国価格は、3万1800ポンド(約620万円)から。価格を踏まえると、急速充電や航続距離は、もう少し上の性能が欲しいところ。英国での保証は、距離無制限で3年間。購入を見送るほどのことではないとしても、これも他メーカーの方が充実している。

冷静に比較すれば、ライバルに届かない部分はあるものの、エースマンを選びたくなる気持ちは理解できる。何しろ、れっきとしたミニだからだ。インテリアやスタイリング、パーソナライゼーションの幅、キビキビとした楽しい走りなど、強みは沢山ある。

価格は少しお高めかもしれないが、そのぶんプレミアム。魅力的で面白い、小さな電気自動車だ。

◯:運転が楽しい インテリアデザインと製造品質 ミニらしい個性
△:短めの航続距離 クロスオーバーとしては車内が狭め 少し癖のある運転体験

ミニ・エースマン E クラシック(英国仕様)のスペック

英国価格:3万1800ポンド(約620万円)
全長:4079mm
全幅:1754mm
全高:1514mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:7.9秒
航続距離:299-308km
電費:6.9-7.0km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1720kg
パワートレイン:ハイブリッド同期モーター
駆動用バッテリー:38.5kWh
急速充電能力:75kW
最高出力:183ps
最大トルク:29.5kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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