【プラス10ps/マイナス60kgに見え隠れ】マセラティ本気のロードカー「GT2ストラダーレ」を初お披露目!

公開 : 2024.12.01 11:00

2024年夏、ザ・クエイルのモータースポーツ・ギャザリングにおいてワールドプレミアした『マセラティGT2ストラダーレ』が日本上陸を果たし、110周年記念イベントでお披露目されました。西川淳がそのモデル概要を解説します。

マセラティのブランド新時代を象徴

『マセラティMC20』がブランド新時代を象徴するモデルとしてデビューしたのが2020年。コロナ禍でテストも思うようにできないなか、ようやくこの手で操ることができたとき、ふたつの驚きがあった。

ひとつは、たとえミドシップのスーパーカースタイルであっても、マセラティらしく『よくできたグラントゥーリズモ』に仕立てられていたこと。そしてもうひとつは、街中や高速ではとてもGTらしく振る舞う一方で、ひとたびワインディングロードに持ち込めばまるでレーシングカーのような走りを見せたことだった。

2024年夏、ザ・クエイルのモータースポーツ・ギャザリングでデビューした『マセラティGT2ストラダーレ』。
2024年夏、ザ・クエイルのモータースポーツ・ギャザリングでデビューした『マセラティGT2ストラダーレ』。    平井大介

不必要なまでに強靭なボディとよく動くアシ、パワフルな心臓と秀逸な制動システムは、GT走行とスポーツ走行をかくも高いレベルで両立するのかと、改めて感心したのだった。

そんなMC20のポテンシャルの高さは、ステファン・ラテル・オーガニゼーションによって催されている欧州の『ファナテックGT2選手権』においても存分に発揮された。MC20をベースに開発されたレーシングカー、マセラティGT2が圧倒的な戦績を収めたのだ。

もちろんGT2は、エアロダイナミクスを中心に大胆なレースカーチューニングが施されている。とはいえ、基本骨格を含めてその多くはMC20そのものだ。ナンバーのついたMC20を初めてホームワインディングの駐車ロットに置いたときの違和感の正体はそれだったかと、勝利の報に接するたび思ったものだった。

そう、幅といい低さといい、そしてそこまでの道のりにおける走りといい、MC20のパフォーマンスはロードカー離れしていた。

マセラティ・コルセがロードカーに仕立て直し

今年(2024年)の夏、ザ・クエイルの『モータースポーツ・ギャザリング』において、『マセラティGT2ストラダーレ』がワールドプレミアされた。壇上には3台のミドシップ・マセラティが並んでおり、まさにマセラティ新時代の本格的な幕開けを象徴する出来事だった。

あれから3ヵ月と少し。早くもGT2ストラダーレが日本上陸を果たし、創立110周年を記念するイベントにおいてファンに披露された(今回ご紹介する写真は事前に行われたメディア向けプレビューで撮影されたもの)。

スワンネックタイプの大型リアウイングを備え、280km/h時はリアに370kgものダウンフォースがかかる。
スワンネックタイプの大型リアウイングを備え、280km/h時はリアに370kgものダウンフォースがかかる。    平井大介

GT2のロードカー版である。マセラティ・コルセ(MC)がレーシングカーをロードカーに仕立て直したというわけだ。『ストラダーレ』とわざわざ名乗らなくてはいけないほど、その姿がレーシングライクであることがこのモデルの本質を物語っていると思う。

そもそも高いポテンシャルを持つMC20である。プリプレグ成型のカーボンモノコックボディなどはさしずめその核心というべきだろう。それをベースにレーシングカー由来のエアロダイナミクスを応用する。もうそれだけでロードカーとして十分刺激的な内容になることは想像に難くない。

実際、280km/h時におけるダウンフォースは最大500kgと、MC20の3倍強だ。スワンネックタイプの大型リアウイングの恩恵でリアには370kgもの力がかかる。コーナリングスピードの増大は火を見るより明らかだろう。

アピアランス的にも、空力デバイスの存在がMC20との差異を最も明確に表現していた。複雑な立体構造を持つフロントバンパースポイラーに始まり、サイドステップ、サイドダクト、アンダーディフューザーなど、その形状にはいちいち見所が詰まっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    西川淳

    Jun Nishikawa

    1965年生まれ。京都府在住の自動車ライター。スーパーカーなどの高額車、スポーツカー、クラシックカーといった“趣味のクルマ”が得意。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想としており、中古車事情にも通じる。「永遠のスーパーカー少年」として知られている。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

110周年記念!マセラティ小特集の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事