【プラス10ps/マイナス60kgに見え隠れ】マセラティ本気のロードカー「GT2ストラダーレ」を初お披露目!

公開 : 2024.12.01 11:00

まるで押し寄せるコーナーが見えてくるかのよう

バタフライドアを開ければ、車内の雰囲気はさらにコンペティツィオーネ気分。MC20の面影は一掃され、スペシャルなバケットシートやコンソールがものものしさと緊張感を生み出している。身をまかせ、ステアリングを握りしめると、まるで肩越しにけたたましいサウンドが聞こえ、押し寄せるコーナーが見えてくるかのようだ(早く運転してみたい!)。

この手のスペシャルモデルを語る時、エンジン性能の向上をことさら気にする人も多い。エンジンスペックはわかりやすい指標だが、裏を返せば、数字のみにほだされて総合的な判断を失うこともなきにしもあらず。

ストラダーレのサブネームがつく、あくまでロードカーとなるから、室内には最低限の快適装備がつく。
ストラダーレのサブネームがつく、あくまでロードカーとなるから、室内には最低限の快適装備がつく。    平井大介

GT2ストラダーレにはMC20と同じくドライサンプ式ネットゥーノエンジン(つまりメイド・イン・モデナ)をドライバーの背後、低い位置に積んでいるが、その最高出力はわずか10psアップの640psである。大したことない、と思うなかれ。ターボエンジンなのだから、数字だけあげて驚かそうと思えばさほど難しくはなかったはず。けれどもこのクルマを作ったのはレーシングチームなのだ。総合バランスを重視した結果の数値と見るべきだろう。

実際には、サーキット走行に耐えうる冷却性能や吸気性能を確保した結果エンジンスペックが上がった、というあたりが真実であろう。+10psという控えめな数字に、かえってプロフェッショナルの仕事が透けてみるようだ。

最後に軽量化の話もしておこう。マイナス60kg。大人ひとり分である。貴方はこの数字もわずかと見るだろうか? 重要な事実はその大半(40kgくらい)がバネ下重量、ホイールとブレーキシステムであるということ。サーキット派の諸氏にはそのことだけを伝えれば、十分ではないだろうか?

記事に関わった人々

  • 執筆

    西川淳

    Jun Nishikawa

    1965年生まれ。京都府在住の自動車ライター。スーパーカーなどの高額車、スポーツカー、クラシックカーといった“趣味のクルマ”が得意。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想としており、中古車事情にも通じる。「永遠のスーパーカー少年」として知られている。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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