ポルシェ911カレラGTS
公開 : 2015.02.02 23:50 更新 : 2017.05.29 19:04
また、サスペンションとステアリングは安定感を高め、フィードバックの絶対量を増やすためにチューンしなおされ、車高はPASMを装着したカレラSよりも10mm低くなっている。
なんと7速のマニュアル・ギアボックスにもアップグレードが施されている。これは911ファミリー初のことで、シフト・クオリティーが高められているという。素のカレラの状態でもさほど問題なかったし、GT3がPDKのみになったからといって幻滅することのなかった筆者だが、これはこれで嬉しい改善である。
GT3よりは街乗りに特化しているものの、乗り心地に関しては ’快適’ と呼ぶにはやや差支えがある。標準の20インチ・ホイールと扁平タイヤがその原因で、ノイズやピッチは明確に伝わってくる。
またエグゾースト・ノートもそれなりの主張をしており、穏やかなグランド・ツアラーを想像するとやや驚くかもしれない。速さを体感するには、頻繁にシフト・チェンジしてやる必要もある。
ただしこれらすべてが、運転に喜びを与えるための仕掛けであることは明らかだ。GTSならではのアップグレードにはすべての折り合いがついており、どの所作にも無理がまったくない。7500rpmに訪れるフラット6のクライマックスを一度味わえば、もうGTSの ’魔力’ からは抜け出せなくなってしまう。
やや硬くなった乗り味と引き換えに得た驚くほどのコントロール性の高さについても書いておこう。911はその特異な駆動系ゆえに、荒れた路上でスプリングが落ち着きを失うという、ある種の癖を内包している。けれでもGTSには、それらの欠点がまるでないのだ。
結果的に、他のグレードにくらべて常に路面にピタリとくっついているような感覚をもたらす。コーナリング時にもフラットな姿勢を維持しつづけ、正確性が微塵も失われないのも同じ理由だ。
またシフト・フィールの向上の傍らで、ステアリングの重みがさらに好ましくなり、フィードバックの量も豊富になっている。これらの改善は直進時にも体感できるほどだ。
グリップに関してはサーキットでこそ真価を味わえるものの、一般道の特にウェットな路面でも、GTSならではのバランスの良さやダイレクトなレスポンス、ハンドリングの正確性、安定性は十分に看取することができる。