「4代目」ベントレー・フライングスパー・スピードへ試乗 V8 HVで782ps 視覚的にも欲しい新世代感

公開 : 2024.12.16 19:05

まったく異なる印象を生み出すV8エンジン

一方で、V8エンジンを始動させると、まったく異なる印象を与える。ドラマチックでダイナミック。ついさっきまで、文明的なハイブリッド・サルーンへ本当に乗っていたのかと、不思議に感じてしまう。

コンフォート・モードとベントレー・モードもあるが、その上のスポーツ・モードを選ぶと、フライングスパー・スピードは見違えたように活発になる。8速ATのギアを問わず、ほぼ瞬間的に求めた速度へ到達できる。

ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)
ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)

車重は2646kgあるにも関わらず、操縦性も見事。従来のW12モデルより、意欲的なことは間違いない。姿勢制御も、不満ない快適性を維持しつつ、適度に引き締まる。

ハイエンド・サルーンらしい能力へ浸りたいなら、デフォルトのベントレー・モードが理想的。コンフォート・モードも快適だが、ベストバランスといえる。

この特性の幅を生んでいるのが、デュアルバルブ・ダンパーを備えた新しいサスペンション。W12の時代より200kg重いにも関わらず、それを感じさせない。

巨大な駆動用バッテリーは、リア側に載る。その結果、荷室の容量は大幅に削られ、ルノールーテシアの方が広いほど。そのかわり前後の重量配分はリア寄りになり、軽快感に結びついている。

ベントレーの技術者によると、普段使いでの燃費は13.0km/L前後だという。だが今回、高速道路を巡航させてみた限り、ほぼ10.0km/Lだった。782psのリムジンだと考えれば、悪くはないだろう。

完成度は歴代最高 視覚的にも新世代感が欲しい

技術的な進化ぶりを理解すると、従来とほぼ変わらないデザインがもったいなく思える。特にインテリアは、素材や仕立てが上質で居心地は素晴らしくても、メルセデス・マイバッハなどの同等クラスと比べると、従前的に見えてしまう。

新しいフライングスパー・スピードは、世界最高のサルーンへ更に1歩近づいた。モデルとしての完成度は歴代最高で、運転体験も素晴らしい。しかし、包括的な更新を受けた技術に対して、外装や内装が追随できていないことは否めない。

ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)
ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)

このようなサルーンは、乗られる期間が長い。視覚的にも新世代感が欲しいと感じるのは、筆者だけだろうか。

◯:文句なしの動力性能 更に向上した快適性と操縦性 電気で充分な距離を走れる
△:先代と大きく違わない内外のデザイン 明らかに狭い荷室

ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)のスペック

英国価格:22万6500ポンド(約4417万円)
全長:5316mm
全幅:1987mm
全高:1484mm
最高速度:284km/h
0-100km/h加速:3.5秒
燃費:71.5km/L
CO2排出量:33g/km
車両重量:2646kg
パワートレイン:V型8気筒3996cc ツインターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:782ps(システム総合)
最大トルク:101.8kg-m(システム総合)
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(四輪駆動)

ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)
ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事