袖を通したような「一体感」 ロータス・エリート(2) 悪評ばかり聞こえた4シーターの重要モデル

公開 : 2024.12.15 17:46

2.2Lの太いトルク 袖を通したような一体感

ブラックのエリートは、タイプ83のシリーズ2.2。ロジャー・マクルフ氏がオーナーで、タルガトップを備えるかなり珍しいリビエラ仕様になる。20代の頃に初代エランを運転して以来、ロータス・マニアの道を歩んできたという。

ランボルギーニ・エスパーダ風のスタイリングが、彼の好きな特徴。派手なイエロー・レザーのインテリアは、好みで後に張り替えられたものだ。「誰かが酔っ払って間違って乗り込んでも、すぐに違うと気づくでしょうね」。とマクルフが笑う。

ロータス・エリート・タイプ83(1980〜1982年/英国仕様)
ロータス・エリート・タイプ83(1980〜1982年/英国仕様)

デロルト・キャブレターが載った2.2Lエンジンはトルクが太く、明らかに余裕がある。高速走行時も、4速へ落とすことなく、充分な速度上昇を誘える。ダッシュボードのデザインは、前期型より洗練されているのと同時に、個性が薄れたともいえる。

製造品質は、僅かに向上した印象が漂う。それでも小さなペダル3枚の間隔と、シフトレバーの感触、エリートへ袖を通したような絶妙の一体感は変わらない。

ダークブルーのエリートは、1974年式。ポール・ブリットン氏がオーナーで、ロータスを得意とするガレージ、ロータスビッツ社のアップデートを受けている。

ボディカラーは、オリジナルと同じ色味で再塗装。シャシーは後のロータス・エクセル用で、亜鉛メッキ済み。サスペンションのトップリンクやロワー・ウイッシュボーンもエクセル用。ドライブシャフトは、トヨタスープラのアイテムが流用されている。

ボディは、サイドモールが省かれている。それ以外は、オリジナルが保たれた。

その後のロータスにとって重要なモデル

ボンネットを開くと、2.6Lへ排気量が増やされた、インジェクションの907エンジンが姿を表す。ビレット・クランクシャフトへの置換やポート研磨のほか、タルボ・サンビーム・ロータスへ通じるチューニングで、最高出力は273psまで向上している。

トランスミッションとリミテッドスリップ・デフも、トヨタからの流用。果たして、現代のどんな要求にも対応するであろう、高速エリートへ仕上がっている。

ロータス・エリート・タイプ75(1974〜1979年/ロータスビッツ仕様)
ロータス・エリート・タイプ75(1974〜1979年/ロータスビッツ仕様)

トルクは大幅に増強され、かなり早い段階でシャシーの安定性の限界に達する。とはいえ、その前後の推移は穏やか。1970年代のスタイリングで、現代的なメカニズムが包まれているが、フランケンシュタイン的な化け物感はない。

古き良きロータスの4シーター・コンセプトが現代へ受け継がれていたら、こんなクルマが作られただろうな、と思わせる。非常にまとまりが良い。

2代目エリートは、チャップマンが手掛けたモデルの中で、最も巧妙な設計が施された1台だと筆者は思う。コンパクトなボディに、大人4名が乗れるパッケージングを実現し、優れた動力性能と燃費を叶えていた。半世紀前の技術的な偉業といえる。

衝突安全性に対応し、数年先の排出ガス規制にも準拠できていた。一時は悪評ばかり聞こえたタイプ75は、ロータスにとって重要なモデルでもあった。過去へとらわれず、改めて存在を評価すべきモデルといえる。忘却されるのは、あまりに惜しい。

協力:ロータスビッツ社、マイク・テイラー氏

ロータス・エリート(1974〜1982年/英国仕様)のスペック

英国価格:1万6433ポンド(新車時)/2万ポンド(約390万円/現在)以下
生産数:2398台
全長:4458mm
全幅:1803mm
全高:1207mm
最高速度:212km/h
0-97km/h加速:7.5秒
燃費:12.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1158kg
パワートレイン:直列4気筒1969・2174cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:157-162ps/6500rpm
最大トルク:19.3-22.0kg-m/5000rpm
ギアボックス:5速マニュアル/3速オートマティック(後輪駆動)

ロータス・エリート(1974〜1982年/英国仕様)
ロータス・エリート(1974〜1982年/英国仕様)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ロータス・エリートの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事