えっ、これがジャガー? 2000万円超の高級EVブランドへ 新型「タイプ00」が示す道とは

公開 : 2024.12.04 18:05

ジャガーは新型コンセプト「タイプ00」で、新時代の12万ポンド(約2300万円)の高級EVにふさわしい革新的なデザインを打ち出した。ブランドはどこへ向かうのか、そのデザインを英国編集長が紐解く。

すべてが前衛的

今までの騒動は忘れよう。できれば、この2週間の「Living Vivid」や「Breaking Moulds」に関する騒ぎは、頭から消し去ろう。

代わりに、待望の次世代コンセプトクーペ、ジャガー「タイプ00(ゼロゼロ)」に注目していただきたい。90年の歴史を持つジャガーブランドにまったく新しいデザインスタイルをもたらし、2026年からショールームに登場するEVシリーズの方向性を定めるものだ。

ジャガー・タイプ00コンセプト
ジャガー・タイプ00コンセプト    ジャガー

タイプ00は2ドアのクーペで、このボディタイプは量産化されないと聞いている。1961年のジャガーEタイプのレイアウトを彷彿とさせるように、今回あえてこのコンセプトカーが選ばれたのかもしれない。Eタイプはジャガーデザインにおける過去の飛躍の先駆者として、誰もが挙げるクルマだからだ。

同社関係者によると、タイプ00のサイズ、プロポーション、そして何よりもデザインスタイルは、今月初めにテスト走行の様子が公開された次世代量産車(4ドアのセダンタイプ)に「非常に近い」という。このモデルは、新設計のJEAプラットフォームをベースに、2026年から順次発売される3車種のうちの1台目である。

ジャガーの推定では、JEAプラットフォームは航続距離約692km(米EPAモード)を実現し、15分間の充電で約321km(同)を走行できる能力を備えている。バッテリーの容量は未公表だが、100kWhを超えると考えられる。

タイプ00は、12月2日に米国のアートフェア「マイアミ・アート・ウィーク」で発表された。デザイナーが13台の実物大モデルを製作するほどの徹底的なプロセスを経て完成したものであり、その成熟度の高さがうかがえる。デザイン部門の責任者であるジェリー・マクガバン氏によると、すべてが前衛的であったという。「反復的なアプローチでは、我々が目指すところには到達できなかっただろう」と同氏は振り返る。

車名には、これまで多くのジャガーの名車に用いられてきた「タイプ(Type)」という言葉を使用しており、今後の命名法が過去からあまりかけ離れたものにはならないことを示唆している。

12万ポンドの価格帯へ

タイプ00は、前ヒンジ式のディヘドラルドアを備えた2ドア車であり、量産モデルよりも短いホイールベースで設計されている。量産モデルでは、傾斜したルーフ、ロングホイールベース、独特な長さのボンネットなど、旧来のジャガーのスタイルを踏襲することが分かっている。

また、重いリアウィンドウを廃止し、代わりに2つのサイドカメラによるデジタルバックミラーを採用した。

ジャガー・タイプ00コンセプト
ジャガー・タイプ00コンセプト    ジャガー

ジャガーによると、タイプ00のエクステリアデザインは、長く自信に満ちたラインと、美しく贅沢なプロポーションを特徴としているという。表面処理は極めてシンプルで、ほぼフラットな箇所もあるが、滑らかな複合曲線が含まれた部分もある。

全体として大胆で革新的な印象を受けるが、これはデザイナーの狙い通りだ。モダンな表面処理と控えめなディテールにより、洗練され抑制の効いた印象を与え、12万ポンド(約2300万円)という現行モデルの2倍以上の価格帯にふさわしいものとしている。

グリーンハウスは低さを強調している。ウエストラインはかなり高く、フラットなルーフとリアパネル(窓なし)を備え、まるでチョップトップのような外観だ。その点では、かつてのジャガーXJSに似ていると言える。

フロントには従来型のグリルはなく、装飾として16本のバーからなる新しいデザイン要素「Strike Through」が使われている。同じデザインがボンネット上部にも使われ、フロントガラスを通り抜けて車内のダッシュボードにつながっている。巨大な23インチホイールも、Strike Throughをデザインの一部として使用している。

記事に関わった人々

  • スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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