えっ、これがジャガー? 2000万円超の高級EVブランドへ 新型「タイプ00」が示す道とは

公開 : 2024.12.04 18:05

若い富裕層に照準

JLRの誰もが、このプロジェクトにおける600人ものJLRデザイン部門全体の功績を称えることに腐心しているが、4年前に策定された「Reimagine」戦略を支えてきたチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるマクガバン氏の影響は明らかだ。レンジローバーのような高収益モデルをジャガーからも出そうという考えが、ミニマルでモダンなアプローチを後押しした。

マクガバン氏は、10年前の同社の製品目標ではこのような大胆なアプローチは許されなかったと指摘している。「当時、会社はまったく異なる考えを持っており、まったく異なる競合他社をターゲットとしていた」

ジャガー・タイプ00コンセプト
ジャガー・タイプ00コンセプト    ジャガー

XEやXFといったセダン、さらにEペイスFペイスといったSUVは、BMWアウディから販売シェアを奪うことを目標としていた。ここ数か月で、それらのモデルは英国での販売がすべて終了となった。

当然のことながら、ジャガーの幹部たちは、同社が負うリスクの大きさについて議論したがらないが、ほとんどの幹部はリスクがあることを認めている。JLRのCEOであるエイドリアン・マーデル氏は、「ジャガーなしではJLRの成功はない」と断固とした口調で主張する。この発言は、ジャガーの名を中国企業に売り、レンジローバーの生産に専念して生計を立てる方が英国で幸せな生活を送れる……などと考える人に対する念押しなのだろう。

ブランド改革により、従来の顧客の一部を遠ざけてしまうリスクがある一方で、同社は12万ポンドの支払い能力を持った新しい自動車愛好家層を獲得する決意を固めているようだ。かつてEタイプを「世界で最も美しいクルマ」と称したエンツォ・フェラーリ氏の言葉に恥じない、まったく新しい製品を作ろうとしている。

グローバー氏はこの1年、待ち受けるチャレンジの大きさにワクワクしていると語ってきた。新世代のジャガーを購入する人々について、同氏は調査結果を引用して次のように説明する。

「何よりもまず、彼らは独立心に富んでいる。デザインを理解し、独自性を求めている。若く裕福で、人脈があり、都会的な生活を送っている可能性が高い。資金は豊富でも時間は乏しいので、当社との関わり合いにおいてあらゆる面で楽さが求められる」

今日のEVの低迷を踏まえて、ジャガーが受け入れられるかどうか案じているのだろうか? どうやら、そんなことはないようだ。すべてはタイミングの問題だ。ジャガーが話しているのは、2030年に全盛期を迎えるモデルについてであり、2024年ではないという。

「それに、当社の製品はゲームチェンジャーになるだろう。航続距離は最長690km、15分の充電で320km以上の走行が可能だ。これは、現在市場に出回っているものとは根本的に異なるものだ」とグローバー氏は語っている。

記事に関わった人々

  • スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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