【第3回】森口将之の『もびり亭』にようこそ:モビリティデザインにカッコよさは必要か?

公開 : 2024.12.11 17:05  更新 : 2024.12.11 17:11

機能目的なモビリティに官能を求めた納得の理由

鉄道デザインの未来を考える場を提供する活動グループで、僕も関わっている『レイルウェイデザイナーズイブニング(RDE)』が、LRTが開業したばかりの栃木県宇都宮市で開催した第10回RDEフォーラムで、『LRTはカッコよくあるべき』という発言が、整備や運行に携わる複数の方から出たのです。

道路交通で言えば、LRTは路線バスに近い存在です。なので、カッコいいことが大事という言葉に驚きましたが、理由を聞いて納得しました。

芳賀・宇都宮LRTこと宇都宮芳賀ライトレール線。機能重視の公共交通に、官能要素を盛り込むことで、利用者増や、沿線住民への好影響を導くことができる場合もある。
芳賀・宇都宮LRTこと宇都宮芳賀ライトレール線。機能重視の公共交通に、官能要素を盛り込むことで、利用者増や、沿線住民への好影響を導くことができる場合もある。    森口将之

福岡県のある都市で、スタイリッシュな新型車両が入ったことで市民がお洒落になっていったという話を宇都宮市長が聞いたことがきっかけで、誰もがあの電車に乗ってみたいと思わせるような、流線型で近未来的な形をデザイナーにお願いしたそうです。

具体的には、既存の設計をベースにしつつ、先頭を1.5m前に出しました。そのままではカーブで先端が架線柱などに接触するので絞り込み、ピラーは先端に行くほど細くして、運転士の視界を確保したそうです。

LRTの利用者数が予想以上となった理由のひとつは、この流線型にあり、箱型だったら誰も見向きもしなかっただろうという声もありました。

乗ってみたい形。これこそがモビリティデザインの原点であり究極であると感じました。今の日本では、本来は自由度の高い乗用車も、箱型が多くなっています。自分の気持ちを高め、まちの景色を美しくするためにも、もっと多くの人が、モビリティのデザインにこだわってほしいと思っています。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

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