【軍用車に起源を持つ本格クロカン】今一番ホットなジャンル!ランクル250とディフェンダーをオンロードで乗り比べ

公開 : 2024.12.10 11:45

SUVの中でも本格的なオフロード走行が可能なクロカンモデルが人気です。ここではトヨタ・ランドクルーザー250とランドローバー・ディフェンダーという、乗用車志向が強い2台を持ち出し、西川昇吾がオンロードで乗り比べました。

乗用車志向が強くなった2台

SUVブームは今に始まったことではないが、ここ最近はSUVの中でも本格的なオフロード走行が可能な『クロカンモデル』の人気が高い。2021年に新型となったトヨタランドクルーザー300は受注再開の目途が立たず、中古車はプレミア価格となっているし、2018年にフルモデルチェンジしたスズキジムニーは、現在でも納車まで1年以上待つケースがあるそうだ。クロカンモデルは今一番ホットな自動車ジャンルと言えるだろう。

そんなクロカンモデルは基本的に新規車種が登場しない。長い伝統と歴史を持つモデルがほとんどだ。今回試乗したトヨタ・ランドクルーザー250とランドローバーディフェンダー(グレードは110SE P300)も、起源を辿れば70年近く前の軍用車まで行き着く。そのように軍用車を歴史の起点として様々な派生車種が誕生しているケースが多いのがこのジャンルだが、この2台は中でも乗用車志向が強くなっていったモデルと言える。

トヨタ・ランドクルーザー250(左)とランドローバー・ディフェンダー(右)をオンロードで乗り比べ。
トヨタ・ランドクルーザー250(左)とランドローバー・ディフェンダー(右)をオンロードで乗り比べ。    佐藤亮太

ランドクルーザーから派生し、インテリアの居住性や街乗りでの快適性などを重視して誕生したのがプラドで、そこから今回の250へと進化を遂げた。

ディフェンダーはランドローバーの歴史を語るに外せないクロカンモデルだ。しかし、現行モデルへのフルモデルチェンジ時に、本格クロカンモデルの条件として挙げられることが多いラダーフレームを廃止し、モノコックボディを採用した。これによりオンロードでの快適性は向上した。しかし、それだけではディフェンダーとしては許されない。当然ながら高い悪路走破性や渡河性能などは健在だ。

基本メカニズムは大きく異なる

どちらも生い立ちや高いオフロード性能を考えると、世間的には似ていると言われても当然な2台。しかし、両車は大きな違いがある。まずランドクルーザー250は前述のとおりラダーフレームで、ディフェンダーはモノコックボディとなっている。

そしてエンジン、共に直列4気筒のガソリンエンジンだがランドクルーザー250は2.7LのNA、ディフェンダーは2.0Lのターボとなっている。実際に乗ってみると、走り始めてすぐに両車の違いは明らかとなる。それだけ大きく異なる乗り味となっているのだ。

両車ともガソリンエンジンの直列4気筒だが、ランクル250は2.7LのNA、ディフェンダーは2Lターボとなる。
両車ともガソリンエンジンの直列4気筒だが、ランクル250は2.7LのNA、ディフェンダーは2Lターボとなる。    佐藤亮太

オンロードはディフェンダーの方が快適

今回のようなオンロードでは、ディフェンダーの方が快適でストレスフリーだ。モノコックボディであっても求められるオフロード性能を実現するために、強固に設計されたボディは高い剛性を実現。それが乗り心地にも良い影響を与えている。サスペンションがしなやかに動き、路面を追従している印象。よく動く足で乗り心地が良好なのも、ボディ剛性が高いからこそなせるわざだ。

エンジンは静粛性が高く、低回転からも十分なトルクがある。ターボラグなど感じさせることなく、ドライバーの意思をスグに反映してスムーズに加速してくれる。まるで高級サルーンを思わせる乗り心地だ。

ランクル250もディフェンダーも、クロカンモデルとして十二分な性能を誇る。
ランクル250もディフェンダーも、クロカンモデルとして十二分な性能を誇る。    佐藤亮太

対してランドクルーザー250は、ラダーフレームが故に、ディフェンダーと比べると路面からの入力が様々な方向へと逃げているような印象で、シャキッとしない。気になる揺れを多く感じるのは間違いなくこちらだ。

エンジンサウンドの主張も激しく、低回転のトルクこそ大きな不満は感じないが、中回転域以降はパワーが追いつかずエンジンに力不足を感じる。高速道路でも少し加速しようとスロットル開度をやや増やせば、シフトダウンをして回転が高まりエンジンが唸る。乗り味で言えば、正直古さを感じる。

オンロードだけの試乗では、誰もがディフェンダーの方が優れていると感じるはずだ。しかし、どちらのモデルも真価はオフロードやタフな使用シーンで発揮される。そのようなシーンでの実用性を考えるとランドクルーザー250は光って見える。特にそれを感じるのがインテリアだ。どちらも物理ボタンが主となっているが、独立したボタンが多くグローブを着用しても操作できそうなスイッチ類となっている。さらに各種インターフェースや表記もシンプルで分かりやすい印象なのだ。

モノコックボディを採用したディフェンダーは、伝統を尊重しながら新たな価値の創造を目指した。対するランドクルーザー250は発表会でも『原点回帰』とアピールされたように、性能や耐久性は進化しながら、古臭いと思えるほどにクロカンモデルとしての価値を求めた。どちらもクロカンモデルとしての性能は十二分であるが、そのキャラクターは大きく異なっていたのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    西川昇吾

    1997年、富士スピードウェイのほど近くに生まれる。必然的に、モータースポーツとともに幼少期を過ごす。当時愛読した自動車雑誌の記憶に突き動かされ、大学時代から自動車ライターとして活動を開始。卒業後、動画系の自動車媒体に所属したのちフリーとして独立。地元の地の利を生かし、愛車のNBロードスターでのサーキット走行や、多彩なカテゴリーでのレース参戦を積極的にこなす、血気盛んな若手モータージャーナリスト。
  • 撮影

    佐藤亮太

    Ryota Sato

    1980年生まれ。出版社・制作会社で編集経験を積んだのち、クルマ撮影の楽しさに魅了され独学で撮影技術を習得。2015年に独立し、ロケやスタジオ、レース等ジャンルを問わない撮影を信条とする。現在はスーパーカーブランドをはじめとする自動車メーカーのオフィシャル撮影や、広告・web・雑誌の表紙を飾る写真など、様々な媒体向けに撮影。ライフワークとしてハッセルブラッドを使い、生涯のテーマとしてクラシックカーを撮影し続けている。佐藤亮太公式HPhttps://photoroom-sakkas.jp/ 日本写真家協会(JPS)会員
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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