【まるで50:50のFRマシン】マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダーを全開にしてわかった高次元の走行性!

公開 : 2024.12.11 11:45

サーキット走行で感じる出来の良さ

富士スピードウェイ名物、約1.5kmのホームストレートに差し掛かりスロットルを全開にすると、悠々と300km/h近くまで加速する。ただ、そんなことはこのクラスのスーパースポーツならば当たり前のことだろう。しかしアルトゥーラスパイダーで驚かされたのは、しっかりと目が追いつくことであった。速度への恐怖感なくスロットルを踏み続けることができるのである。ボディ剛性が高く、突如破綻することのない高いスタビリティがあるからこそだ。単にハイパワーなモデルならば踏み切ることはできない。

高速コーナーのコカ・コーラコーナーでややリアがスライドしたが、その挙動は非常にマイルドで衝撃的であった。純粋なMRであることを考えると、ピーキーな動きでシビアなカウンター操作をドライバーに求めてもおかしくない。しかし、アルトゥーラ・スパイダーは50:50のFRマシンを思わせるマイルドな挙動で、カウンターを操作するべきタイミングを教えてくれるような動きであった。

アルトゥーラ・スパイダーは電子制御で我慢を強いることなく、ドライバー自身が手懐けている感触がある。
アルトゥーラ・スパイダーは電子制御で我慢を強いることなく、ドライバー自身が手懐けている感触がある。    マクラーレン

これは秀逸な電子制御の恩恵もあるが、ボディ剛性が高くサスペンションがしっかりと路面を追従してしなやかに動いているのも大きいはず。そして何より穏やかな挙動だからこそ、ドライバー自身がマシンを手懐けているという高揚感を得やすいのだ。

パワートレインも高次元でまとまっている。エンジン単体で605psを発生する3.0LのV6ツインターボエンジンだが、ターボラグは感じさせない。ハイブリッドシステムとのマッチングが非常に自然かつ、低速トルクを補う方向性で味付けされている。その乗り味はまるでスーパーチャージャーを搭載したマシンに乗っているようであった。

アルトゥーラ・スパイダーは扱いやすく、静かに走行することが可能な最新鋭のパワートレインを有している。それでいて電子制御で我慢を強いることなく、ドライバー自身が手懐けている感触がある。そんなマクラーレン・アルトゥーラ・スパイダーの乗り味は、新時代のファントゥドライブを体現したスーパースポーツであった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    西川昇吾

    1997年、富士スピードウェイのほど近くに生まれる。必然的に、モータースポーツとともに幼少期を過ごす。当時愛読した自動車雑誌の記憶に突き動かされ、大学時代から自動車ライターとして活動を開始。卒業後、動画系の自動車媒体に所属したのちフリーとして独立。地元の地の利を生かし、愛車のNBロードスターでのサーキット走行や、多彩なカテゴリーでのレース参戦を積極的にこなす、血気盛んな若手モータージャーナリスト。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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