マツダ・デミオXDツーリング

公開 : 2015.02.03 23:40  更新 : 2017.05.29 19:13

その指宿スカイラインを走るデミオの印象は、楽しいの一言。一般的に低速トルクが豊かと評されるディーゼル・エンジンだけれど、じつはアイドリングやや上くらいの極低回転域では決して力強くはない。なので信号が多く、完全停止からの加速が連続する街中ではSKYACTIV-Dの魅力を感じる場面もそれほど多くはないけれど、1300回転ぐらいから印象は一変する。

ターボやハイブリッドのように何かに後押しされているのではなく、エンジンの発するチカラそのものの大きさで加速していくから、スピードの上昇っぷりというか、「ノリ」が自然で心地よい。低〜中回転域の力強さはガソリン・エンジンで例えるなら2〜2.5ℓ級で、オトナ3名+撮影機材を載せたまま、アップ・ダウンの続くワインディングを難なく登っていく。

低〜中回転域の豊かなトルクを武器に、ほぼ3速固定でワインディングを走れてしまうSKYACTIV-Dだが、組み合わされる6速MTも素晴らしい。各ギアのゲートはきっかけを与えてあげるだけで吸い込まれるように入り、とくに前後方向のシフト・チェンジは節度感に優れ、また全体の高い剛性感を感じる。一般的に、コンパクトカーのMT車というといかにも廉価グレードらしいタテにもヨコにもルーズなゲートという印象だけれど、デミオのそれは完全にスポーツカーのフィーリングだ。

スポーツカーらしいフィーリングといえば、デミオ開発陣が徹底的に拘ったポイントのひとつに、ドライビングポジションが挙げられる。これはステアリングの位置にドライバーの身体中心が正対した際、左右の足を均等に置くことができるようなペダル位置を実現したもの。とくに足元空間に張り出しの少ない左足の自由度には驚かされ、慣れるまではむしろ落ち着かなさを感じるほど。しかし走り出してしまえば、正しい運転姿勢をとることで車両感覚も掴みやすい。運転に集中しやすい環境づくりこそ、結果的に安全に繋がるというマツダのヒューマン・マシン・インターフェイスが現れている部分である。

いっぽうで、同じく運転への集中を目的に用意されたヘッズアップ・コックピットはやや使いにくさも感じた。メーター・フード上に備えられた透明のバイザー部分に、速度やレーン・キープ情報などを表示するこの機能は、ドライバーの視線移動をなるべく少なく抑えつつ、より多くの情報を伝えるための装備。たしかに運転中の視点において、上下左右の移動量は少なくなるけれど、前後の距離感を調整する必要性は変わらない。フロントガラス越しに前方を見ていた直後に、フード上のバイザー部分に表示される情報を読みとるような場面では、表示が見づらいと感じる場面もあった。

デミオに搭載される1.5ℓのSKYACTIV-Dは、MT車とAT車では最大トルクの数値や発生回転数に違いがある。MTでは22.4kg-m/1400〜3200rpmなのに対し、ATでは25.5kg-m/1500〜2500rpm。ピーク値にして約3kgもの差はクラッチ容量の違いなどが原因と思われるけれど、実際にAT車の走りっぷりからは、数値ほどの出力の違いは感じられない。

むしろ印象深いのは全体的に低く設定されたギア比や最終減速比で、最大トルクの発生回転域はMTに比べ狭いものの、優れた電子制御やパドル・シフトを駆使して走る気持ちよさはむしろATのほうが上だ。前述のように優れたドライビング・ポジションをとることができるのもあって、左右のパドル・シフトによる操作も自然に行える。ブレーキングからシフト・ダウン、ステアリングを切り込み、ノーズが出口を向いたらアクセル・オン。そうした一連の動作がスムーズに行え、じつに気持ちがいい。

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