おもちゃではありません 世界の奇妙なマイクロカー 37選 前編

公開 : 2024.12.15 18:05

戦後間もない1950年代、安価な乗り物として「マイクロカー」という超小型の乗用車が普及した。必要最低限の機能を備えたエコノミーカーから、ちょっと贅沢なスポーツモデルまで、多種多様なマイクロカーを紹介する。

小型車が本当に小型だった時代

1950年代、欧州全土でマイクロカーの一大産業が勃興した。

誰もが自家用車を求めていたが、多くの人々は「ちゃんとした」クルマを買う余裕がなく、安い中古車も少なかった。そこで注目されたのが、2気筒エンジンを搭載し、当時新素材として話題になっていたグラスファイバー製のボディを持つ超小型車である(一部のモデルはスチール製)。

奇妙だが素晴らしいマイクロカーの世界を覗いてみよう。
奇妙だが素晴らしいマイクロカーの世界を覗いてみよう。

1950年代を通じて、多くのマイクロカー企業が成長したが、1959年にミニ(Mini)が登場すると、一気に淘汰されてしまった。1960年代まで存続することができたのは、ほんの一握りのメーカーだけだ。

マイクロカーの中には独創的で優れたものもあったが、驚くほど質の悪いものも数多くあった。今回は特に興味深いマイクロカーを37台紹介するが、どれが前者でどれが後者なのかは、皆さんの判断にお任せする。

ピールP50(1962年)

まずはギネスブックに載っている、史上最小の量産車から紹介しよう。イングランドとアイルランドに挟まれたマン島に拠点を置くピール・エンジニアリング社が開発した三輪のP50は、赤、白、青の3色展開だった。

1962年から1965年にかけて50台程度が生産されたが、現在生産が再開されており、ガソリンエンジン搭載モデルとEVモデルがある。実際に運転してみたAUTOCARの評価は、「4.8馬力の幸福のジェネレーター」だ。

ピールP50(1962年)
ピールP50(1962年)

ビスキューター(1953年)

驚くべきことに、1953年から1960年にかけて、この拷問器具のようなクルマがスペインで約1万台も生産された。ビスキューター(Biscuter)という車名は「2人乗りスクーター」を意味するもの。1930年代の超高級車で知られるガブリエル・ヴォワザン氏が開発したエコノミーカー、バイスクーター(Biscooter)がスペインに持ち込まれ、このような呼び名となったのだ。

ビスキューター(1953年)
ビスキューター(1953年)

ブルッシュ・モペッタ(1956年)

ブルッシュ・モペッタは、ピールP50が豪華に見えてしまう(少なくとも屋根はあった)ほどミニマリズムを極限まで追求したマイクロカーだ。1人乗りで、手で引っ張って始動するプルスタート式の50ccエンジンを搭載し、1956年から1958年の間にわずか14台が生産された。

ブルッシュ・モペッタ(1956年)
ブルッシュ・モペッタ(1956年)

ブルッシュV2(1956年)

こちらのブルッシュV2はわずか12台しか生産されておらず、モペッタよりもさらに珍しい存在だ。4本のタイヤと2人分の座席が完備され、98ccのエンジンを搭載している。最高速度は約64km/hであった。

ブルッシュV2(1956年)
ブルッシュV2(1956年)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事