スパイダーからワンボックスまで! フィアット850 シリーズ(1) リアエンジンなイタリアの大衆車

公開 : 2024.12.29 17:45

リアエンジンの小さなイタリア車、850シリーズ サスとエンジンは600譲り 古いポルシェと印象が重なる走り 美しいスパイダーはジウジアーロ 7座のワゴンも 英編集部が4種をご紹介

リアエンジンの典型的な小さなイタリア車

グローバルモデルが一般化する以前、クルマにはお国柄が表れていた。世界は、もっと興味深い場所といえた。グループ内のブランド間でプラットフォームを共有し、エンブレムを付け替える、という発想は一般化していなかった。

英国車だから、ドイツ車だからという理由が、クルマ選びの大きな基準になった。自分の感性に合致したモデルを、もっと自由に選べたように思う。

アイボリーのフィアット850 ベルリーナ・ノルマーレと、レッドのフィアット850 スパイダー
アイボリーのフィアット850 ベルリーナ・ノルマーレと、レッドのフィアット850 スパイダー

今回振り返るフィアット850は、まさにその筆頭。活発に回る小排気量エンジンに、無駄のない快活なスタイリングまで、典型的な小さなイタリア車といえる。リアエンジンの500や600と同様に。

ベーシックな2ドアサルーンの850 ベルリーナや、ワンボックスの850 ファミリアーレは、数100万人の移動手段になった。スポーティなクーペやスパイダーは、小さなエキゾチックカーとして熱狂的なファンを生み出した。どれも、人々を幸せにしてきた。

設計をまとめたのは、500も手掛けた伝説的な技術者、ダンテ・ジアコーサ氏。リアエンジンは、イタリア人にとって当たり前のレイアウトになった。その後、彼はフィアット128とアウトビアンキ・プリムラで、前輪駆動モデルの雛形も創造したが。

1955年に登場した600は、エンジンが633ccから767ccへ拡大されても、9年後には時代遅れ感が否めなかった。そこで費用対効果を求めつつ、革新的な発想で帰着したのが、1964年発売の850シリーズだ。

サスペンションとエンジンは600譲り

サスペンションは、基本的に600譲り。前後にアンチロールバーが追加されつつ、横向きのリーフスプリングとアッパー・ウイッシュボーンをフロントに、コイルスプリングとセミトレーリングアームをリアに採用した構成は、ほぼ同じといえた。

スチール製のティーポ100型4気筒エンジンも、ボアアップされていたが、600からの継投。843ccから34psが発揮され、最高速度は120km/h。従来から5psと11km/h引き上げられていた。

フィアット850 ベルリーナ・ノルマーレ(1964〜1971年/欧州仕様)
フィアット850 ベルリーナ・ノルマーレ(1964〜1971年/欧州仕様)

3枚のベアリングがクランクシャフトを支え、カムシャフトはプッシュロッドを介し、アルミニウム製ヘッド内のバルブを開閉。整備コストを抑えるため、クランクシャフト・プーリー内に遠心オイルフィルターが実装された。

トランスミッションは新開発。オールシンクロの4速マニュアルが標準だった。

600から大幅に進化していたのが、パッケージング。2027mmと短かいホイールベースは、27mm伸びた程度だが、全長はベルリーナで360mmもプラス。全幅は45mm広がり、リア・トレッドも同等に拡幅され、安定性が大幅に改善していた。

当初のプロトタイプでは、ボディスタイルは4ドアで凸型の3ボックスも検討された。しかし製造コストの高さと空力特性の悪さから流れ、ノッチバックの2ドアサルーン、ベルリーナへ落ち着いた。

600ではフロントに位置した燃料タンクは、リアシートとエンジンの間。安全性が向上し、車内空間に余裕が生まれ、広い荷室も与えられた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フィアット850 シリーズの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

おすすめ

人気記事