イタリア車との「甘い生活」 フィアット850 シリーズ(2) 積極的に回したいティーポ100

公開 : 2024.12.29 17:46

リアエンジンの小さなイタリア車、850シリーズ サスとエンジンは600譲り 古いポルシェと印象が重なる走り 美しいスパイダーはジウジアーロ 7座のワゴンも 英編集部が4種をご紹介

ベルリーナと別物のボディとインテリア

フィアット850 スポーツクーペのオーナーは、キャス・ランゲ氏。2年前にイタリアから英国へ運んできたという。1968年式で、ヘッドライトはシリーズ2の特長となる4灯。ディーラーオプションだった、カンパニョーロ社製のアルミホイールを履く。

スタイリングを担当したのは、ファアットのチェントロスティーレ部門。ベルリーナより、全長は33mm長い。1966年のフィアット・ディーノ・クーペや、1967年のフィアット124クーペと、面影が重ならないでもない。

フィアット850 スポーツクーペ(1968〜1972年/欧州仕様)
フィアット850 スポーツクーペ(1968〜1972年/欧州仕様)

ボディの印象は850 ベルリーナと大きく異なり、技術を共有するとは感じにくい。フロントフェンダーのラインは強調され、リアピラーは優雅にカーブを描く。ストンと切り落とされたカムテールに、4枚のテールライトが並ぶ。

インテリアも別物、大きなスピードとタコのメーターが、ワイドなパネルに並ぶ。ダッシュボードは、ステアリングホイールのリムと同様に、ウッド調のトリムで飾られる。

ビニール張りで、多少のサポート性があるフロントシートと同様に、リアシート側もベルリーナより豪華。空間は狭いけれど。新車時の英国価格は870ポンドで、最も安価な2+2 GTとして販売された。

車内はタイトで、左肩がドアに触れる。ペダルは、かなり右側にオフセットしている。

エンジンを始動させると、僅かに大きいハミングが後方から聞こえてくる。クラッチペダルのミートポイントは手前側。発進させれば、レッドラインへ吸い込まれるようにティーポ100ユニットが回る。積極的に運転したくなる。

ジウジアーロが手掛けた美しいスパイダー

路面がうねるコーナーでは、ベルリーナのようにフロントが上下へ揺れる。しかし、追加されたパワーで、シャシーの能力を発揮させやすい。幅が155、偏平率80のタイヤは、優しい乗り心地だが、高い速度域での操縦性も悪くない。

ステアリングホイールは軽く回せ、手のひらには鮮明な感触が伝わってくる。しかし、直進性はイマイチ。常に細かな修正が必要で、横風の影響も受けやすいようだ。

フィアット850 スポーツクーペ(1968〜1972年/欧州仕様)
フィアット850 スポーツクーペ(1968〜1972年/欧州仕様)

速度が高すぎると、アンダーステア。リアタイヤはしっかり路面を掴み、アクセルペダルを戻すと、フロントノーズは内側へ吸い込まれていく。アスファルトが乾いていれば、テールスライドすることはない。運転体験は素晴らしく、4台のベストだろう。

一方で見た目のベストは、850 スパイダー。ベルトーネ社に在籍していたジョルジェット・ジウジアーロ氏がスタイリングを手掛けている。今日の1台はクーペと同じくレッドで、1972年式。オーナーは、ロブ・アンザローネ氏だ。

カンバストップはスチール製フラップの下へコンパクトに畳まれ、リアデッキはフラット。英国では正規販売されておらず、6年前にアメリカ・オハイオ州から渡ってきた北米仕様とのこと。フロントフェンダーに、サイドマーカーが追加されている。

フェアリングのないヘッドライトが、シリーズ2の証。「イタリアのスピリットが大好きなんですよ。運転する度に、笑顔にしてくれます」。とアンザローネは説明するが、筆者も同感だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フィアット850 シリーズの前後関係

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