イタリア車との「甘い生活」 フィアット850 シリーズ(2) 積極的に回したいティーポ100

公開 : 2024.12.29 17:46

クーペと変わらないスパイダーの動的特性

ダッシュボードのデザインは、850 クーペやベルリーナと異なる。スピードとタコの他、3枚の補助メーターも、フェイクウッド張りのメーターパネルに並ぶ。センターコンソールは、アメリカのディーラーで追加されている。

スパイダーのシャシーは驚くほど強固で、よほど鋭い凹凸を通過して、ステアリングコラムが僅かに揺れるだけ。動的特性は、850 クーペと殆ど変わらない。補強材が追加され、車重は約20kg増えており、僅かに活発さが劣る程度だろう。

フィアット850 スパイダー(1968〜1972年/欧州仕様)
フィアット850 スパイダー(1968〜1972年/欧州仕様)

サイドウインドウを全開にし、肘を載せれば、気分はイタリア北部のワインディング。ヴェリア・ボルレッティ社製タコメーターの針が、キビキビと角度を変える。グレートブリテン島はすっかり肌寒いが、陽光が心地良い。

850シリーズで、遠く離れたイタリア半島を目指すなら、ファミリアーレがベスト。車中泊すれば、ハイシーズンでも法外なホテル料金にうんざりすることはない。

バーガンディの1台は、スティーブン・グローブ氏がオーナー。1982年式で、900E アミーゴを名乗る。1970年にシリーズは大幅に見直され、903ccエンジンを得ている。

1976年にもアップデートを受け、ハイルーフと大面積のフロントガラス、新しいフロントグリル、バンパーを獲得。英国では、これをベースに900T アミーゴというキャンピングカーが提供された。

1980年のフェイスリフトで、900Eへ進化。ダッシュボードには、フィアット127譲りのメーターがやや強引にマウントされている。

イタリアのお国柄を印象付けた850シリーズ

筆者の両親は、1978年に新車で900T アミーゴを購入。子供の頃の思い出は、小さなキャンピングカーとともにある。サイドヒンジのルーフを開き、車内に吊り下げられたハンモックで夏休みの夜を明かしたものだ。

グローブのクルマは、折りたたみ式のテーブルを片付け、前後のシートを倒せば大きなベッドを作れる。ルーフを持ち上げて、フレームを展開することで、2階部分にも大人が2名眠れる。

フィアット900E アミーゴ・キャンパー(1976〜1986年/欧州仕様)
フィアット900E アミーゴ・キャンパー(1976〜1986年/欧州仕様)

後方のエンジンの上には、コンロとシンク。戸棚も各所にある。走行中に荷物が散らばらないよう、しっかり整える必要はあるが、タイヤの付いた小さなコテージだ。

多数の装備が追加され、車重と防音性が増しているため、洗練性は4台の中でトップ。エンジン音が、ファンのように聞こえてくる。ステアリングホイールは、バスのようにほぼ水平。着座位置はフロントアクスルの真上で、前方の視界は清々しいほど広い。

乗り心地は、少し弾む感じ。加速が活発とは呼べないが、のんびりと田舎道を巡るのには魅力的だろう。クラシックカーとしての評価も高く、近年は単なる古いキャンピングカー以上の評価額で取引されている。

イタリアというお国柄を、強く印象付けた850シリーズ。この特徴は、国外でもクーペやスパイダーが人気を博した理由でもある。英国色の濃いミニやMGも悪くないが、このフィアットならドルチェ・ヴィータ的なライフスタイルまで味わえそうだ。

協力:ストラカー社

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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