極上エクスプレス・アウディ 新型 S6 e-トロン・スポーツバックへ試乗 見事に調教された「野獣」

公開 : 2024.12.25 19:05

EVへ一新した新型S6 ツインモーターで総合550ps 見事に調教された野獣 実用性も間違いなし 穏やかで上品 極めて高い洗練度 素晴らしいエクスプレス・アウディだと英編集部は評価

システム総合で550ps 0-100km/h加速は3.9秒

新しいA6を、アウディは前衛的な電動のアッパーミドルクラスだと表現する。不満ない航続距離を備えた、高性能なエグゼクティブ 4ドアクーペとステーションワゴンだ。そしてもちろん、その上には更に高速なS6が存在する。

スペックシートには、「S」を名乗るのに相応しい数字が並ぶ。システム総合での最高出力は、ローンチコントロール時で550ps。最大トルクは85.5kg-m。0-100km/h加速は3.9秒でこなすという。

アウディS6 e-トロン・スポーツバック・クワトロ・エディション1(欧州仕様)
アウディS6 e-トロン・スポーツバック・クワトロ・エディション1(欧州仕様)

ツインモーターの四輪駆動で、リア側は380psと59.0kg-mを発揮する永久磁石ユニット。フロント側には、190psと28.0kg-mを発揮する非同期ユニットが組まれる。通常は503psで、0-100km/h加速は4.1秒。これでも不満なく速いといっていい。

アダプティブ・エアサスペンションが標準装備で、アルミホイールは21インチ。インテリアは、ワイドなモニターパネルとナッパレザーのシート、アンビエントライトでモダンに仕上げられる。

当初英国へ導入されるS6は、ほぼフル装備のクワトロ・エディション1仕様のみ。パノラミック・ガラスルーフは、お好みで透明部分のパターンを選べる。価格は9万7500ポンド(約1901万円)とお安くないが、これ1択と考えれば、悩む時間は減るはず。

極めて高い洗練度 見事に調教された野獣

S6で公道へ出てみると、期待通りに素晴らしい。A6と同様に、洗練度は極めて高く落ち着いている。目的地を安楽に目指せるクルマとして、速さは間違いないはずだが、一部のバッテリーEVが強みとするような攻撃的な印象はない。

パワーデリバリーは文句なしにたくましいが、リニアでシームレス。見事に調教された野獣、といっても良いかもしれない。背徳感すら漂う優越的な雰囲気を、筆者はとても気に入った。

アウディS6 e-トロン・スポーツバック・クワトロ・エディション1(欧州仕様)
アウディS6 e-トロン・スポーツバック・クワトロ・エディション1(欧州仕様)

必要なパワーを正確に引きだせるだけでなく、アクセルレスポンスは鋭敏。カーブの途中できっかけを与えて、少しリアを遊ばせることもできる。スキール音を鳴らして。

本気でワインディングを駆け回りたい時は、ドライブモードはダイナミックが良い。トラクション・コントロールをスポーツに切り替えると、自由度の高い振る舞いになり、楽しい時間を過ごせる。

車重は2400kgと伝えられている。この重さだから、アンダーステア傾向が強いとしても疑問はない。それでもアクセルペダルの加減で、狙い通りのラインへ調整していける。ステアリングホイールには充分なフィードバックがあり、操る自信を高めてくれる。

だとしても、S6は毅然とした印象を失わない。ドライバーの興奮を誘うタイプではない。取締役会へ出席するエグゼクティブが、おどけて小走りするような、そんな心象に似ているかもしれない。

エアサスペンションは、引き締まった姿勢制御を維持しつつ、路面の不整を平然と対処。乗り心地は、感動的ですらある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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