「空気」が決めたカタチ DS最上位モデル「No 8」初公開 航続距離750kmの高級EV

公開 : 2024.12.16 06:25

DSが新型EV「No 8」を公開した。新しいネーミングとデザイン・アプローチを採用したフラッグシップモデルで、高い空力効率を実現。流麗なボディラインと独特なインテリアも特徴だ。

香水のような新しいネーミング方式

DSは12月12日、新型のフラッグシップモデル「No 8(N°8)」を公開した。デザイン、技術、マーケティングに対して新たなアプローチを追求した高級EVだ。

ステランティス傘下のDSブランドは、2024年に欧州での販売台数が25%減の3万5000台に落ち込むなど、販売面で苦戦を強いられている。業績を回復し、2031年までに収益目標を達成しなければ、ブランド閉鎖のリスクもある。

DS No 8
DS No 8    DS

そのような重要な時期にデビューした新型No 8は、プジョー408やe-3008のようなファストバックスタイルを採用しつつ、パワートレインの選択肢はバッテリーEVのみとした。兄弟ブランドが同一モデルでEVと内燃機関を用意しているのに対し、DSはEVに的を絞った。

スタイリングとしては、2020年公開の「エアロスポーツラウンジ」コンセプトからインスピレーションを得たが、生産用に大幅にトーンダウンされている。

また、香水のNo 5やNo 19を販売するフランスのファッションブランド、シャネルに似た新しいネーミング方式をDSとして初めて採用した。現行車の車名は基本的に数字のみ。今後は、DS 3の後継車などにも新しいネーミングが採用される予定だ。

No 8は、STLAミディアム・プラットフォームをベースに、クラストップの空力性能という開発目標を掲げた。「これまでは、素晴らしいデザインを創り出してから、そのデザインを効率的にする方法を考えていたが、このクルマでは異なるプロセスを採用した。まず空力から始めたのだ」と、デザイン責任者のティエリー・メトローズ氏はAUTOCARに語っている。

「スケッチを始めた当初から、空力特性の専門家たちと話し合いを重ねた。『この部分にエッジを付けると空力特性が良くなる。これは必要ない』といった具合に。そして、本当に空力特性を中心にクルマとスペックを設計した」(同氏)

そのため、No 8には風の流れを妨げないようにさまざまな工夫が施されている。最も顕著な例は、プジョー3008よりも60mm低い流線型のルーフラインである。結果として、空気抵抗係数は0.24(Cd値)となり、ライバルであるテスラモデルYの0.23にわずかに及ばないものの、ポールスター4の0.26よりも優れている。1回の充電での航続距離は最長750kmを実現。同じ97.2kWh(使用可能容量)のバッテリーを使用するプジョーe-3008ロングレンジよりも50km長く走行できる。

航続距離の追求は、車内にも表れている。通常のヒーターよりも5~10%少ないエネルギーで効率的に乗員の体を温めることができるとして、オープンカーに通常装備されるタイプのネックウォーマーをシートに搭載した。さらに、車内全体を加熱するよりも効率的であるため、シートヒーターも標準装備される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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