アウディ、ベルギーEV工場閉鎖へ 「Q8 eトロン」不振で早期生産終了の可能性も
公開 : 2024.12.17 06:05
アウディは、Q8 eトロンを生産しているベルギー・ブリュッセルの工場を2月末に閉鎖予定と発表した。高級EVへの需要鈍化で販売が落ち込んだことや、工場の厳しい立地条件が原因とされている。
高級EVの低迷 立地条件にも要因
ドイツの自動車メーカーであるアウディは、2月28日にベルギーのブリュッセル工場を閉鎖すると発表した。工場の買い手を探していたが、見つからなかった。
同工場では現在、電動SUVのQ8 eトロンが生産されているが、予定より早く生産を終了するのではないかという疑問が浮上している。後継車はメキシコで生産されると見られている。
ロイター通信によると、アウディの生産担当責任者ゲルト・ウォーカー氏は、「ブリュッセル工場の閉鎖という決定は辛いものだった。個人的には、これまで職業人生で下してきた中で最も難しい決断だった」と語っているという。
アウディは同工場の売却に向けて、複数の自動車メーカーと協議中だと伝えられていた。ベルギーのメディアは、中国のEVメーカーであるニオ(NIO)が最有力候補であると報道したが、同社CEOのウィリアム・リー氏はこれを否定した。
結果的に交渉はまとまらず、アウディは11月に工場の閉鎖が避けられないことを認めた。
これにより、現行世代のQ8 eトロンの今後が疑問視されることになった。2018年にeトロンという名で生産が開始され、2022年に大幅なアップデートを受けて新しい名称とスタイリング、そして大容量のバッテリーを獲得した。
小型のQ4 eトロンや中型のQ6 eトロンも加わった電動SUVラインナップのフラッグシップとして、2020年代半ば頃まで生産が継続される見込みであった。
7月、アウディは「高級EVセグメントにおける世界的な注文の減少」がQ8 eトロンの存続を脅かしていると明かした。同車の需要低下は「セグメント特有」のものであり、他のEVには影響がないと指摘している。
また、Q8 eトロンはフォルクスワーゲン・グループの汎用MLBプラットフォームの改良版を採用しているが、新しい「プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)」をベースとするQ6 eトロンなど、新モデルの増産が人気低下の要因の1つであるという。
同クラスの内燃機関搭載のアウディQ8はスロバキアのブラチスラバで生産されており、今回の発表による影響は受けない。
アウディは販売台数を公表していないが、ブリュッセル工場では2023年にQ8 eトロンおよびQ8スポーツバックeトロンを5万3555台生産している。これはドイツのツヴィッカウで生産されたQ4 eトロンの約半数である。
ブリュッセル工場では「長年にわたる構造的な課題」に直面していたとアウディは説明する。同工場は市街地に近いため、都市部以外の他の工場と比較して、配送や出荷に伴う物流コストが嵩み、再編は非現実的だった。