違和感ナシのレプリカ? クーリエ・キャデラック(2) 屋根は半分で切断 内装はセビルのまま

公開 : 2025.01.04 17:46

とある社長が少量生産を夢見た、気軽に乗れるメルセデス・ベンツ540K ベースは1978年式キャデラック 美しいプロポーション 良好な操縦性 ワンオフの珍車を英編集部がご紹介

セビルのグリルを縦に加工し再利用

タイヤの幅は、1930年代のモデルとしては太すぎるかもしれない。キャビンの形状も、見る角度によっては不自然ではある。それでも、他のレプリカのようなプロポーションの破綻は避けられている。

AUTOCARをお読みいただいているようなクルマ好きを、オリジナルだと騙せる容姿とはいえないだろう。だが横からは、1936年のメルセデス・ベンツ540Kを綺麗に拡大したように見えなくない。

クーリエ・キャデラック(1991年/ワンオフモデル)
クーリエ・キャデラック(1991年/ワンオフモデル)

リア回りは精巧に仕上げられている。バックランプは後付け感が拭えないものの、違和感は殆どない。540Kと同じく、荷室へアクセスできるハッチが備わる。セビルの電動システムが流用され、ソフトクローズ機能も動く。荷室は奥行きがあり、実用性も高い。

垂直に切り立ったラジエターグリルは、キャデラック・セビルのグリルを縦に加工し直したもの。キャデラックのロゴがグリル上部に活かされ、その頂部にオーナメントが光る。ルーバーが切られたボンネットは、中央ヒンジで左右に開く。

法的な闘争を避けたかったロバート・メイドメント氏は、キャデラックへ確認を取り、これらの再利用の許可を得ている。何度も却下されつつ、最終的にはゼネラル・モーターズの幹部から書面で認めてもらったとか。

インテリアはキャデラックのまま

ドアを開くと、インテリアは1970年代後半のキャデラック。左右に別れたフロントガラスと長いボンネット越しの前方視界を除けば、運転体験もセビルのまま。ワンオフ特有の作りの甘さはまったくない。大量生産されたような、まとまりが漂う。

ダッシュボードは、幅が狭められたエンジンルームに合わせてある。中央で切断し結合されているが、非常に自然。ウッドパネルにメタルトリム、幾何学的な造形などの組み合わせは、アールデコ調。レプリカ・クラシックカーの内装として、馴染んでいる。

クーリエ・キャデラック(1991年/ワンオフモデル)
クーリエ・キャデラック(1991年/ワンオフモデル)

パワーシートやクルーズコントロール、エアコン、間欠ワイパー、オートヘッドライトなど、当時の最新技術もすべて動く。ただし、ステアリングホイールとペダルの位置は、かなりオフセットしている。

エンジンは、当初はセビルが積んだ5.7LのV型8気筒が維持された。しかし、1万6000kmほど走ったところで、6.6LのV8へ換装。最高出力は300馬力以上へ上昇しているらしい。

ボッシュ社製のインジェクションが機能し、エンジンは1発始動。3速ATはコラムレバーで操作でき、至って安楽に運転できる。だがアクセルペダルを押し倒すと、ドロドロという唸りを放ちながら、豪快に加速する。

発進時は緩やかに感じられるが、追い越しは余裕綽々。高速道路では、太いトルクで堂々と巡航できる。エグゾースト系はバイパス加工を受けており、スイッチオンで戦前のスポーツカーを彷彿とさせる轟音が開放される。音色はアメリカンだけれど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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