旧サーブ工場の資産売却 NEVS存続危機 重大な転換期を迎えるトロルヘッタン

公開 : 2024.12.19 06:25

スウェーデン・トロルヘッタンにある旧サーブ工場の生産機械が売りに出されている。運営していたNEVSは従業員を解雇し、同工場の歴史に終止符が打たれようとしている。

サーブの歴史が詰まった工場、最終章へ

スウェーデン南西部トロルヘッタンにある旧サーブ工場で使用されていたプレス機などの生産機械が、工場の清算手続きの中で売却対象としてリストアップされた。

昨年、工場を運営していたナショナル・エレクトリック・ビークル・スウェーデン(NEVS)が「休眠モード」に入り、340人の従業員のうち320人が解雇された後、工場は休止状態にあった。そして今月に入り、残りの従業員の解雇が発表された。

トロールヘッタンは1949年にサーブ92の製造を開始した。
トロールヘッタンは1949年にサーブ92の製造を開始した。

NEVSはこのリストラと生産休止について、投資資金を調達できないことが原因であるとほのめかした。

同社CEOのニーナ・セランダー氏は、「今回の決定は、当社のオーナーである恒大集団と、投資家候補との契約交渉がまとまらなかったことによるものだ」とした。

恒大集団は中国第2位の不動産開発会社であったが、コロナ禍で債務危機に陥った。NEVSにとって、初の量産車であるエミリーGT(Emily GT)の開発完了まであと1年半というタイミングだった。

その後まもなく、エミリーGTのプロジェクトが新興EVメーカーのEVエレクトラに買収されたことが明らかになった。

当時、EVエレクトラのCEOであるジハード・モハメッド氏は次のように語っていた。「再びトロルヘッタンからクルマを送り出すことになる。今回の買収は、開発から量産までを一貫して支援する必要があることを十分に認識した上で行った。わたしは自社生産と強固なバランスシートを信じている。また、トロルヘッタンには我々のビジョンを実現できる人材がいると信じている」

しかし、サーブを専門に取扱うブログサイト『Saab Planet』の報道によると、NEVSは今年5月にEVエレクトラとの契約を打ち切っており、セレンダー氏は「技術データ、知的財産、ハードウェアなどはこれまで一度もEVエレクトラに送付または引き渡されたことはない」と述べたという。

現在、トロルヘッタン工場はスウェーデンの企業Stenhaga Investが所有している。

地元メディアは、Stenhaga社が今後の方向性について協議中であり、中国製EVに対する新たなEU輸入関税を回避するために、中国メーカーが参入する可能性もあると報じている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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