「ハイブリッド版」が真打ち? アバルト500e 長期テスト(最終) 短距離メインの通勤急行!

公開 : 2025.01.05 09:45

アバルト・フレーバーの効いた500e 高めの価格に目を引くスタイリング 公道での走りの興奮度はいかに? 本物の電動ホットハッチと呼べるのか、英国編集部が長期テストで確認

積算1万610km 大好きだとは即答しにくい

アバルト500eを取り囲む環境は、この半年で大きく変化した。発売当初は、唯一といえる電動ホットハッチといえた。しかし今では、ミニ・クーパー SEとアルピーヌA290が登場。フォルクスワーゲンも、ポロ GTIを置き換えるバッテリーEVを開発中だとか。

2024年9月には、フィアット500eとアバルト500eは一時的に生産がストップしてもいた。バッテリーEVの需要が、期待ほど伸びていないためだ。このクラスとしては価格が高めで、航続距離が長くはない、モデル自体の訴求力にも関係はあるだろう。

アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)
アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)

長期テストでアバルト500eと数か月をともにしてきた筆者も、まだ印象の整理には迷いがある。運転は間違いなく楽しい。見た目もチャーミングだ。でも、このクルマが大好きか?と聞かれると、イエスとは即答しにくい。

好きな部分は沢山ある。アシッド・グリーンのボディカラーは少し奇抜だが、毎朝笑顔にしてくれる。立体駐車場から、キビキビと脱出できる。信号ダッシュでは、ポルシェ911にも負けない。

操縦性も悪くない。最近もベントレーベンテイガランドローバーディフェンダー 130、ポルシェタイカンBMW i5 ツーリングなどへ試乗したが、どれも小柄で機敏なアバルト500eの印象を際立たせた。それぞれ、強みはあるとしても。

一方で、お値段はフィアット500eより高く、内装に特別感は薄い。低い速度域では、アクセルレスポンスが過敏すぎる。回生ブレーキの効きも、意図するよりだいぶ強い。

実際にはさほど困らなかった航続距離

郊外の道を、気持ちよく駆け回れたことは間違いない。混雑した市街地でも、スルスルと進むことができる。狭い駐車スペースにも滑り込めた。

長いとはいえない航続距離も、実際に乗ってみるとそこまで困ることはなかった。都心からさほど離れていない場所で暮らす筆者の場合、基本的に1度に走る距離は150kmもない。コーヒーが好きだから、長距離ドライブの時は休憩を挟む回数も多い。

アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)
アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)

駆動用バッテリーに優しい、温かい季節なら、1度の充電で1週間の通勤と週末の買い物を賄うことはできた。遠くを目指す時は、30分の充電休憩を行程に挟めば充分だった。

急速充電は最大85kWと速いわけではないが、駆動用バッテリーの容量が小さいため、1時間も待つ必要はなし。自宅のコンセントでも充電はできる。もし距離を長く乗らず、ゆったりと生活しているなら、急速充電器なしでも一緒に暮らせるだろう。

ただし、セカンドカーの域は脱しないと思う。残りの航続距離が10km程度で自宅に辿り着き、充電を初めてすぐに実家へ戻る急用が生じた、といった場面には対応できない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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