「ハイブリッド版」が真打ち? アバルト500e 長期テスト(最終) 短距離メインの通勤急行!

公開 : 2025.01.05 09:45

短距離メインの通勤急行 ハイブリッド版が真打ち?

アバルト500eは、短距離メインの通勤急行として割り切れば、かなり楽しい1台になる。職場が自宅から遠くなく、子供がいない人には、魅力的なバッテリーEVだといえる。とはいえ荷室は狭く、サスペンションが硬く乗り心地は良くはないが。

世界最高峰のホットハッチには、日常性にある程度の妥協を求める例は存在する。しかしアバルト500eの運転体験は、それに目をつぶれるほど出色なわけではない。同じ金額を用意すれば、万能選手的なフォルクスワーゲン・ゴルフ GTIが選べてしまう。ウ〜ン。

アバルト500e ツーリスモと筆者、フェリックス・ペイジ
アバルト500e ツーリスモと筆者、フェリックス・ペイジ

活発に走らせている時でも、完全には没頭できない。駆動用バッテリーの残量が頭によぎるから。走りがいのある一般道で全力を引き出すには、フィーリングが薄く、シャシーの安定感は心もとなかった。

俯瞰すると、フィアット500eでも充分に運転は楽しむことができる。航続距離はより長く、英国価格はお手頃でもある。これも、好きだと即答できない理由の1つになる。

フィアットは、大容量のバッテリーを開発中だという。もし価格が大幅に上昇しなければ、アバルト500eの訴求力は確実に高まるはず。

しかし2026年には、ハイブリッド版が登場する予定。バッテリーEV版と同等にチャーミングな容姿なら、こちらを選びたいと考えてしまうのは、筆者だけではないだろう。

セカンドオピニオ

アバルト500eは、市街地での利用にぴったり。短いホイールベースと、パワフルな電気モーターで、狭い路地や混雑した幹線道路をキビキビと快適に進める。

しかし、回生ブレーキの効きが不自然に強すぎる。バックで駐車する場合などは、滑らかに枠内へ導くのが難しいと感じるほど。 ジョナサン・ブライス(Jonathan Bryce)

アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)
アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)

テストデータ

気に入っているトコロ

こだわりのデザイン:細部までこだわられたデザインは魅力的。ヘッドライトの処理は、特に筆者好み。
タッチモニター:インフォテインメント・システムの機能はベーシックで、稀に反応が重い時もあったが、使いやすい。2024年ではベストの1つ。
エネルギッシュ:制限速度の範囲内で、充分にホットハッチらしさを楽しめる。

気に入らないトコロ

大げさなエンジン音:繁華街で誤って人工のエンジン音をオンにしてしまうと、筆者はちょっと恥ずかしい。
回生ブレーキ:低速域では、回生ブレーキの効きが唐突。調整する余地はあるはず。

走行距離

アバルト500e ツーリスモと筆者、フェリックス・ペイジ
アバルト500e ツーリスモと筆者、フェリックス・ペイジ

テスト開始時積算距離:4622km
テスト終了時積算距離:1万610km

価格

モデル名:アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)
新車価格:3万8195ポンド(約745万円)
テスト車の価格:3万8795ポンド(約757万円)
現行の価格:3万8140ポンド(約744万円)

オプション装備

アシッド・グリーン塗装:600ポンド(約12万円)

電費&航続距離

カタログ航続距離:252km
駆動用バッテリー容量:37.8kWh(実容量)
平均電費:6.4km/kWh
最高電費:7.7km/kWh
最低電費:5.7km/kWh
現実的な航続距離:243km

主要諸元

全長:3631mm
全幅:1683mm
全高:1529mm
最高速度:154km/h
0-100km/h加速:7.0秒
CO2排出量:−g/km
車両重量:1410kg
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
急速充電能力:85kW(DC)
最高出力:156ps
最大トルク:23.8kg-m
ギアボックス:シングルスピード(前輪駆動)
トランク容量:185L
ホイールサイズ:7.0J 18インチ
タイヤ:205/40 R18

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:652.8ポンド(12万7000円/1か月)
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
エネルギーコスト:240ポンド(4万7000円/電気)
エネルギー含めたランニングコスト:240ポンド(4万7000円/電気)
1マイル当りコスト:0.06ポンド(11円)

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト アバルト500eの前後関係

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