型破りな冒険マシン! アリエル・ノマド 2でクリスマスツリーを運ぶ(1) 流暢な没入体験

公開 : 2024.12.24 19:05

強風が吹くスコットランドのティリー島 100年前の冒険家にちなみ、ノマド 2でクリスマスツリーを運んだ英編集部 鋭いステアリングはリニアで狙い通り 中毒性の強い没入体験へ浸った2日間

木が生えていない島へクリスマスツリーを

「マル島より西側、ダッチマンズキャップの西に、木のないティリー島があるんです」。これは、スコットランド・エジンバラの冒険家、イザベル・ワイリー・ハッチソン氏が1924年に出版した、自伝小説「ティリー島の冬」の冒頭にある一節だ。

島を訪れたハッチソンは、1つの計画を実行した。「この島には、今まで木が1本も生えていませんでした。サンタクロースは、上陸できなかったはず。自分がしなければならなかったことは、クリスマスツリーをマル島から大急ぎで運ぶことでした」

アリエル・ノマド 2とスコットランドのカーロウリー城
アリエル・ノマド 2とスコットランドのカーロウリー城

冬には1か月ほど強風が続くティリー島へ、大きなクリスマスツリーを持ち込むことは、100年前には南の島へ雪だるまを届けることくらい大変だっただろう。しかし、ハッチソンは常識にとらわれない女性だった。

2024年には型破りな冒険マシン、アリエル・ノマド 2がある。海は渡れないが、全くの新開発といえ、乗りやすさが向上している。彼女へ思いを馳せ、ティリー島までクリスマスツリーを運んでみてはどうだろう。

中世の雰囲気が残るスコットランド・エジンバラ郊外で、昆虫のようなノマド 2は完全に浮いている。4点式ハーネスでバケットシートに身体を固定し、燃料ポンプのスイッチを入れてから、フォード由来の2.3L 4気筒デュラテック・ターボを目覚めさせた。

ノマド 2の一部になれるバケットシート

発進時のエンジン音は金属的。図太い排気音も重なる。最初の目的地は、スタート地点から10kmも離れていない。すでに腕は泥まみれ。クロスレシオの6速MTを操るレバーは、キビキビ動く。フロントタイヤは、手を伸ばせば届きそうな位置にある。

壁に蔦が絡んだカーロウリー城には、すぐに到着。ハッチソン家によって1852年に築城され、1889年生まれのイザベルも長く住んでいた。現在は高級なイベント会場として市民に利用されており、その日は結婚式のパーティが開かれていた。

スコットランド・エジンバラの冒険家、イザベル・ワイリー・ハッチソン氏が1924年に出版した自伝小説「ティリー島の冬」
スコットランド・エジンバラの冒険家、イザベル・ワイリー・ハッチソン氏が1924年に出版した自伝小説「ティリー島の冬」

今の管理人は彼女へ敬意を払い、地域に貢献した人へ毎年「イザベル賞」を与え称えている。古城の中には、冒険に関する本の他、写真や工芸品などが展示されている。自ずと、筆者も一層の敬意を抱いた。

次の目的地には、高速道路M9号線で。ヒーター付きのベストに、手袋とゴーグルで完全武装。フロントガラスがあるから、バイクのように風にさらされることはないが、エンジン音が背骨へ響いてくる。

バケットシートは座り心地が驚くほど良い。これのおかげで、ノマド 2の一部になれたような気分になる。晴れていれば、日常利用にも耐えるだろう。

シャシー剛性は、先代のノマドから6割以上強固になった。幅が235mmのオールテレーン・タイヤの感触が、パワーアシストを介さないステアリングホイールへ、煩わしくない程度に伝わる。

サイドミラーは後方を良く映すが、バックミラーの景色は、突き出たエアインテークが半分以上。防寒着を着込んだおかげで暖かく、意外と快適だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ウェバー

    Richard Webber

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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