全固体電池の現在地 2025年が決定的な年に 各メーカーのポジションは?

公開 : 2024.12.20 06:05

EVに革新をもたらすと言われてきた全固体電池。長い研究開発を経て、ようやく量産化に近づきつつある。中国、日本、欧州など主要メーカーの開発状況の「現在地」をまとめた。

ようやく聞こえてきた全固体電池の「足音」

EVメーカーが目指す技術的ブレークスルーとして、以前から注目されてきた全固体電池。ついに、2025年には量産化に向けて重要な一歩を踏み出す可能性が出てきた。

全固体電池は、現在使用されている液体リチウムイオンバッテリーよりも多くのエネルギーを蓄え、航続距離も長いことから、次世代のEV用バッテリーと見なされている。

IMモーターズが中国で販売するL6セダン
IMモーターズが中国で販売するL6セダン

従来の液体バッテリーでは、各セルの両端に正極と負極が配置され、物理的なセパレーターでそれらの接触を防ぎ、中央に液体の電解質が存在する構造となっている。

全固体電池では、構造がやや単純化される。液体の代わりに固体電解質が使用され、軽量でありながら、同じ容量でもより多くのエネルギーを蓄えることができる。

また、固体電解質は液体よりも反応性が低いため、穴が開いたり熱せられたりしても発火する可能性ははるかに低い。つまり、安全対策が容易になる。

液体の要素がなくなることで、高温または低温環境においても航続距離が低下しづらく、充電速度も向上すると期待されている。

自動車メーカーにとっては、より柔軟な車両設計が可能となる。例えば、EVのさらなる小型軽量化を実現したり、大型車でも従来と同等サイズのバッテリーからはるかに長い航続距離を引き出したりすることができる。

全固体電池の技術開発は世界中で進んでいるが、普及にはまだ数年かかるだろう。最先端市場の1つである中国では、上海汽車傘下のIMモーターズが現在、「半固体電池」を搭載したL6というセダンを販売している。半固体電池は、従来の液体よりも粘度の高いゲル状の電解質を使用するもので、全固体電池への橋渡し的な技術である。

IMモーターズの半固体電池は、同等の液体リチウムイオンバッテリーと同じサイズで、33kWhの容量アップを実現した。中国の認証試験によると、航続距離が28%向上し、最長1000kmに達するという。

IMモーターズだけではない。ライバルのニオ(NIO)は今年初め、半固体電池を搭載するET7を発売した。1回の充電で1040km以上の走行が可能だ。

世界の主要メーカーの開発状況はどうだろうか。以下に、各社の最新の取り組みを挙げる。

ステランティス

14ブランドをまとめるステランティスは、2026年に新興企業ファクトリアル社が製造した半固体電池の公道テストを開始する予定で、改造したダッジ・チャージャー・デイトナの車両群を使用する。

ステランティスは、STLAラージ・プラットフォームをベースにしたアルファ・ロメオジープマセラティなどの大型車に優先して搭載すると述べている。

ダッジ・チャージャー・デイトナ
ダッジ・チャージャー・デイトナ

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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