「はぐれラリーマシン」なGRヤリス 高い完成度のシャシーを持つM500 BBDC 2024(3)

公開 : 2024.12.30 09:45

AUTOCARの年末恒例、最高のドライバーズカーを決めるBBDC選手権 GRヤリスにエメヤ、アルトゥーラまで多彩なノミネート 公道とサーキットで徹底比較 最高得点を掴む栄えある1台は?

小さく軽く、強力なクルマの楽しさを再確認

大幅にレストモッドされたエリーゼは、本物のロータスだろうか。アナログ・オートモーティブ社が仕上げた、スーパースポーツだ。

ベースとなったのは、2000年式のエリーゼ S1 スポーツ160。完全にバラされ、最新技術で作られた部品へ置換され、新車時以上の丁寧さで組み立て直されている。トレッドは広げられ、最高出力は213psへ上昇している。

アナログ・オートモーティブ・スーパースポーツ(英国仕様)
アナログ・オートモーティブ・スーパースポーツ(英国仕様)

サスペンションのボールジョイントや、フロントのウイッシュボーンは専用開発。リミテッドスリップ・デフはクワイフ社製。5速MTの内部構造もアップデートされている。

エンジンは、ローバーのKシリーズ・ユニットを継承するが、鍛造部品でリビルド済み。スロットルボディがシリンダー毎に並ぶ。果たして、格段に高速なロードスターへ仕上がっている。

過去にも、BBDC選手権へレストモッド・モデルは加わってきた。好成績を残した例もあれば、振るわなかった例もある。だが、トップ3へ勝ち残る傑作は登場していない。

699kgのスーパースポーツは、小さく軽く強力なクルマの楽しさを、再確認させてくれた。激しく共鳴する吸気音と、爆竹のような破裂音が混ざる排気音が、そんな喜びを強調していた。

適度な重み付けの操縦系が、全力で走ろうという気にさせる。疲れることは確かだが、ドライバーズカーに相応しい。サスペンションは、エリーゼほどの繊細さはないものの、出色の減衰力で不整へ順応。恐らく、サーキットで真価が発揮されるはず。

歴代のマクラーレンで最高のロードカー

これ以上にサーキット向きなのが、マクラーレン・アルトゥーラだろう。2024年仕様は、サスペンションとステアリングが改良され、精度が上昇。V6エンジンも若干増強されている。

公道の速度域では楽しみきれないな、というのが筆者の本音。磨き込まれすぎ、ともいえるかも。だが残り5名の審査員は、仕上がりに納得の様子。

ノーブルM500(英国仕様)
ノーブルM500(英国仕様)

マット・ソーンダースは、「サスペンションがしなやかで、ステアリングは適度に重く繊細。正確な反応と、旋回中の安定性のバランスが素晴らしい」。と称える。

ジェームス・ディスデイルも、「歴代のマクラーレンで最高のロードカー」。だと笑みを浮かべる。「この血統らしい、見事な操縦性と姿勢制御が融合しています」。と評するのは、リチャード・レーンだ。

こんなアルトゥーラと別のベクトルを持つミドシップ・スーパーカーが、ノーブルM500。M600のシャシーへ改良を加え、フォード由来のV6ツインターボを強化し、新しいボディを被せたモデルといえる。ただし、まだ完成した状態ではない。

10台の中で、これは特に意見を二分した。アンドリュー・フランケルは厳しい。運転姿勢の悪さ、上部が隠れるメーターなど、不備の多さを指摘する。シフトレバーの長いストロークに、大きなターボラグ、クラッシュ時に頭部を痛めるであろう構造も。

筆者も、プロトタイプ的な部分には否定的だった。とはいえ、シャシーの完成度の高さは明白。サスペンションとステアリングのフィーリングも、大きな美点だった。未完成な領域を、どこまで減点材料にするかで評価は変わる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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