はぐれラリーマシン 公道で使い切れる実力

今年は、エンジンを積んだホットハッチが2台含まれた。2024年に大改良を受けた、トヨタGRヤリスとフォルクスワーゲン・ゴルフ Rだ。

英国価格はお手頃とはいえない、4万ポンド(約780万円)超え。もはや、気軽に選べるドライバーズカーではないが、ボディサイズは適度に小さく、スタイリングも派手すぎない。実用性も担保され、真の喜びを享受できる点で共通している。

トヨタGRヤリス(英国仕様)
トヨタGRヤリス(英国仕様)

先に確かめたのは、ゴルフ R。このモデルの強みは、日常との親和性が重視されていること。純粋なドライバーズカーとして評価を始めると、輝きが弱いように思えてくる。

速さは間違いなし。リアアクスルへ駆動力が積極的に伝わり、鋭くコーナーを駆け抜けるさまは爽快そのもの。それでも公道を飛ばす限り、今回の10台では強く興奮を誘う側にはない。

一方のGRヤリスは、さながら、はぐれラリーマシン。これが同じヤリスなのか、という驚きも伴う。3気筒ターボの実力を、公道でしっかり使い切れる。

アップデートを受け、扱いやすさは向上。すべての入力へ鮮明に反応し、ステアリングの情報量は僅かに増えている。サウンドも自然になった。低くなった着座位置も好ましい。シフトレバーはやや硬いが、小柄なボディのマニュアルは、やはり面白い。

カーブでもストレートでもドラマチック

この対局にあるのが、フォードマスタング・ダークホース。やって来た車両には、10速ATが載っていた。

マッスルカーらしく、V8を唸らせた豪快な加速は痛快。反面、精鋭揃いの中で、操縦性の磨き込みが不充分だったことは否めない。恐らく6速MTでも、上位に食い込むことは難しかっただろう。

フォード・マスタング・ダークホース(英国仕様)
フォード・マスタング・ダークホース(英国仕様)

ステアリングの感触は人工的で、ダイレクトさが乏しい。ドライバーをマスタングへ惹き込むには、サスペンションの洗練度も高めたいところ。

同じくV8エンジンを積む、アストン マーティンヴァンテージもマッスルカー的な雰囲気を宿す。同時に、高次元なスポーツ・グランドツアラーでもある。

メルセデスAMG由来のツインターボ・ユニットは、英国ゲイドンの技術者によって増強。聞き惚れるサウンドへ調律されている。カーブでもストレートでも、ドラマチックさには事欠かない。

シートヒーターをオンにして公道へ。乗り心地は硬めながら、かなり快適。FR+LSDという組み合わせは、トラディショナルでも素晴らしいものだと再確認する。ステアリングには明確なフィードバックがあり、濡れた路面でも安心感は揺るぎない。

ヘアピンカーブではトラクションを活かし、テールスライドさせつつ豪快に脱出。トラクション・コントロールの効きも巧妙だ。疲れて判断力が若干鈍っていても、思い切り楽しませてもらった。サーキットでは、更なる力を発揮するのではないだろうか。

この続きは、BBDC 2024(4)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

BBDC 2024の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

おすすめ

人気記事