全地形対応型スポーツカーの魅力

次にステアリングホイールを握ったのは、アイオニック5 Nより目立っていた、アリエル・ノマド 2。パイプフレームに身体を当てずに、どうやって乗るべきか、そんな事を考える面白さもある1台だ。

とはいえ、ボルダリングの練習が目的のクルマではない。AUTOCARの読者ならご存知の通り、アリエル・アトムは過去のBBDC選手権で優勝を果たしている。優れた遺伝子の持ち主といえる。

アリエル・ノマド 2(英国仕様)
アリエル・ノマド 2(英国仕様)

オフロードに対応したサスペンションは適度にソフトで、アスファルト上でも親しみやすい。2023年のBBDC、ランボルギーニウラカン・ステラート不在の中で、全地形対応型スポーツカーの魅力を伝え切ることはできるだろうか。

このノマド 2は、先代と雰囲気は似ているが、完全な新モデル。シャシー剛性を高めるため、パイプの直径は遥かに太くなった。エンジンは、ホンダ由来の2.4L 4気筒自然吸気から、フォード由来の2.3L 4気筒ターボへ置き換わっている。

サイドウインドウやルーフパネルは、従来どおりナシ。ABSやトラクション・コントロールも備わらない。凍えるリンカンシャー州の外気へ、ドライバーはさらされる。

それでもノマド 2は、ピュアでストロングな運転体験を提供してくれた。パワーウエイトレシオは、ポルシェ911 ターボと同等で、トランスミッションは6速マニュアル。715kgに309psだからすこぶる速い。

均質化する中でノマドが与える刺激は一層深い

カーブへ突っ込み、カウンターを当てながら鋭く脱出すれば、頬へ当たる水しぶきなど忘れられる。新しいターボエンジンと6速MTの印象や、舗装路での一体感では、審査員の意見に差はあったが、楽しいという点では一致した。

「現代のスポーツカーが均質化していく中で、ノマドが与える刺激は一層深いですよ」。アンドリュー・フランケルが、的確に体験をまとめてくれた。

ロータス・エメヤ S(英国仕様)
ロータスエメヤ S(英国仕様)

ワイルドな時間を過ごしたら、少し穏やかなひと呼吸が欲しい。全長5139mmのロータス・エメヤ Sが好適だろう。シートヒーターで、冷えた体も温められる。

イエローに塗られた巨大なサルーンから、ロータスのDNAを感じ取ろうと努力した。ステアリングは精緻で、カーブが連続するリンカンシャー州の道を、流れるように駆け抜けられる。しかし突き詰めていくと、期待通りとはいえないだろう。

ポルシェタイカンに匹敵する、一体感までは得ていない。よりシリアスなノミネート車両ほど、運転へ惹き込まれるわけでもない。バッテリーEVとして、特有の個性を宿すとも表現しにくい。

ベンチマークがタイカンなことは、明確に伝わってくる。それならば、ドイツ生まれのオリジナルを選んだ方が賢明とはいえないだろうか。

エメヤは、洗練され上質な電動サルーンではある。だが、本物のロータスだという表現は少し誇張したものだと、筆者、イリヤ・バプラートは思わずにいられない。

この続きは、BBDC 2024(3)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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