【22歳の編集部員がA110RGTに同乗試乗】ラリージャパンに出場したプロが駆る本物のラリー・アルピーヌを体感!

公開 : 2024.12.25 10:45

2024年11月21~24日に開催された世界ラリー選手権(WRC)『ラリージャパン』にて、アルピーヌA110RGTが2輪駆動部門で優勝を果たしました。そしてその直前、22歳の編集部員オゴーがそのシェイクダウンを取材。週末に優勝するマシンに同乗することもできました。

ラリーで名を馳せたアルピーヌ

僕の中でアルピーヌと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、初代A110のラリーでの活躍。旧いクルマへの造詣が深い人たちなら共感していただけるだろうか。

鉄鋼スペースフレームを覆う、小柄ながらも美しくまとめられたFRP製の軽量なボディ。そのリアエンドに搭載されるのは、チューニングが施されているものの、大衆車に用いられるありふれたエンジン。軽快なフットワークと高いトラクションを活かして、1973年に行われた世界ラリー選手権(WRC)での初代マニュファクチャラーチャンピオンを獲得。アルピーヌの名前が伝説になった瞬間だ。

ラリージャパンに参戦したアルピーヌA110RGT。
ラリージャパンに参戦したアルピーヌA110RGT。    アルピーヌ

その後、アルピーヌは活躍のステージをサーキットへと移すのだが、やはりその名を聞くとついラリーのイメージが先行してしまう。

そんなアルピーヌが、新型A110をベースとするR-GTの規格ラリーカーを携えカムバックしてきたのだから、注目しないわけがない。新型A110はエンジン搭載方式がRRからMRに改められたものの、軽量コンパクトなボディに大衆車ベースのエンジンをチューンして搭載するところは同じ。高(好)バランスがもたらすドライバビリティの良さからクルマ好きのハートを掴んでいるところも、概ね継承しているだろう。

伝説から50年以上が経った現代において、アルピーヌは果たしてもう一度ラリーで名を馳せることができるのだろうか。

体が縮みそうなフルハーネス

そんな時、A110RGTが2024年11月21日より開催されるラリージャパンに参戦、しかもそのクルマに同乗できるというお話をいただき、勇んで愛知へ飛んだ。

まずは今回、貴重なシェイクダウンの時間をメディアへ向けた同乗試乗へと割いて下さったシャゼル・チーム、そしてルノー・ジャポンに心より感謝を申し上げたい。

ラリージャパンの開幕直前、メディア向けにシェイクダウンの様子を公開。
ラリージャパンの開幕直前、メディア向けにシェイクダウンの様子を公開。    アルピーヌ

集合場所である愛知県豊田市の鞍ケ池公園の駐車場へと向かうと、そこは臨時のサービスセンターになっており、各チームのパドックテントで埋め尽くされていた。

試乗とはいえ、ラリーカーのナビシートに座るのだから、シャゼル・チームのレーシングスーツに着替えてヘルメットやハンスなど諸々の装備をつける。張り巡らされたロールケージを這うようにしてクルマ乗り込むと、笑顔のチームスタッフに6点式のフルハーネスを体が縮みそうなほど絞められた。「あ、なるほどね」とその瞬間にようやく事態を察した。

ベースの良さが光る

予想は的中。手足が宙ぶらりんになりそうなブレーキングでタイヤを温めたあとに向かったのは、シェイクダウン用のステージ……というのも名ばかりで、普通の人からしたら日陰の苔むしたクルマ1台分が通れる狭い農道だ。

2WDであることを疑いたくなるようなトラクションを披露してスタート。A110RGTの最も大きな変更点であるというシーケンシャルクロスミッションは、狭い林道でも幾度となくシフトアップを重ねる。湿った路面とは思えない減速Gに力んだ瞬間にはもうすでにノーズは向きを変えており、絶妙なスライドアングルを維持しながら、他のレイアウトのクルマには到底真似できない鋭さで次のコーナーへと飛び込んでゆく。

他のレイアウトのクルマには到底真似できない鋭さで次のコーナーへ。写真はラリージャパンのレース中のもの。
他のレイアウトのクルマには到底真似できない鋭さで次のコーナーへ。写真はラリージャパンのレース中のもの。    アルピーヌ

エンジン搭載位置を若干上方へ移動させ、ストロークを増やしたという特製のサスペンションは、一部大きく舗装が荒れた部分でも全く姿勢を乱さないどころか、衝撃すら感じさせないしなやかなさを見せていた。

終始目を疑うようなペースで林道を駆け抜けていくわけだが、不思議なことに絶叫マシンのようなスリルは一瞬たりとて感じない。ベテランドライバーであるアルマン・フューマル選手とA110RGTの組み合わせは、まるで数秒先が見えているような安心感を生み出していた。改造範囲がさほど大きくないA110RGTは7割が市販車と同じというので、ベースのA110の素性の良さが窺い知れる結果となった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    小河昭太

    Shota Ogo

    2002年横浜生まれ。都内の文系大学に通う現役大学生。幼いころから筋金入りのクルマ好きで、初の愛車は自らレストアしたアウトビアンキA112アバルトとアルファロメオ2000GTV。廃部になった自動車部を復活させようと絶賛奮闘中。自動車ライターを志していたところAUTOCAR編集部との出会いがあり、現在に至る。instagram:@h_r_boy_
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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